441: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/01/22(日) 06:58:05.37 ID:pDh4s1USO
とある夜、龍驤の部屋。
いつものビールではなく、テーブルに置かれているのはコーヒーが二つ。
そして龍驤の対面には、夕張が座っていた。
以前の沈痛な面持ちとは違い、夕張の顔には困惑が浮かんでいる。
煙草を薫せながら、龍驤はそんな彼女の言葉が出てくるのを、優しく見守っていた。
「……龍驤さん。私、気付いちゃいました。北上さんの正体は、ケイくんの幼馴染だって…。
免許合宿の時、本名が呼ばれてたんです。それでケイくんに、幼馴染の名前を訊いたら…。」
「そか…うちも前、明石からケイ坊に昔何があったんか聞いたわ。
せやろなとは思うとったけど…まさかほんまになぁ…。」
「……北上さんの肩に、大きな傷があるんです。
きっとあの事件の傷で…どんな気持ちで生きて、ケイくんと再会してから、今までどんな気持ちで隠してたんだろうって考えたら……。」
「…その傷の事なら、よう知っとるよ。縫う前もほんまズタズタで、女の子に付いてええもんやなかった。」
「知ってるんですか?」
「…あいつは錯乱しとったから覚えてへんけど、あん時あいつを救助したんは、うちや。
陸におった時、うちは救出部隊の隊長やっとってな。そん時の捜索で発見したんやけど…まぁ、ひどいもんやった。
両親は半身吹っ飛んで壁にひっついとるし、弟なんて頭吹っ飛ばされた挙句、下半身ぐちゃぐちゃに齧られててな。
弟のそばに金属バット落ちとって…北上ん事、庇おうとしたんやと思う。
北上な、吹っ飛んだ家族の脳ミソや腹わた、一生懸命遺体に戻そうとしとったよ。ヘラヘラ笑いながらな。
もうええんやって声掛けて、抱っこしたけど…うちも血や肉片でびちゃびちゃになるぐらい、あいつは血塗れやった。」
きゅ、と、夕張が拳を握り締める音が響く。
その表情には、言い知れない怒りが浮かんでいた。
部屋にはコーヒーの香りと、ランダムでPCから流される音楽。
その中で龍驤は、淡々と言葉を続ける。
644Res/552.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。