73: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/07/13(水) 15:05:02.18 ID:0U9M/46cO
「いやああああああああ!!!」
北上が自身の悲鳴で目を覚ますと、そこは昨夜と違う天井だった。
真っ白な天井と、独特の匂い。
そこが医務室であると気付くと、不意に体の熱さとだるさが彼女を襲う。
そして視界の端に映る影に焦点を合わせると、そこには心配そうに彼女を見下ろす顔が一つ。
「ケイ…ちゃん……?」
彼女が昨夜待ち望んでいた人が、そこにはいた。
その存在に気付き、先程までの光景が夢であった事にようやく北上は気付いたのだ。
「随分うなされてましたね……。
点呼に来ないから様子見に行ったら、ひどい高熱だったみたいですよ?
それで、皆でここに運んだんです。」
どうやら自分は、ひどい風邪を引いてしまったらしい。
そこまで自覚出来た時、北上はやっと、自身の置かれていた状況を理解する事が出来た。
「ケイちゃん……怖かったよう…。」
そして痛む体を起こすと、彼女は縋り付くようにケイの胸へと抱き付いた。
ぽろぽろと涙が溢れ、彼の胸元が濡れようともお構いなしだ。
そうして子供のように泣きじゃくる北上の頭を、ケイは優しく撫でていた。
「落ち着きましたか?大丈夫です、怖い夢を見てたみたいですね。」
「うん……あ、今何時!?」
「ん?あー、11時半ですね。何か食べます?」
「そうじゃなくて、工廠は?ここにいて大丈夫なの?」
「いや、皆にお前が診てろ!って言われたんですよ。
今日は軽い仕事だけなんで、妖精達とバリさんで行けそうですし。」
「そう、なんだ……。」
昨夜、彼が徹夜で作業していた事を本当は知っている。
点呼は9時に始まる事が多い。
よく見れば心なしか疲労の色も見えるが、きっとそんな事はお構いなしに、報せを聞いて駆け付けてきたのだろう。
彼がそんな性格なのは、彼女が一番よく知っているのだから。
申し訳なさもあるが、北上は今日は、思い切ってそんな好意に甘える事とした。
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