15:名無しNIPPER[saga]
2016/07/09(土) 01:24:27.48 ID:Px08eZlJ0
気付いた途端、瞳が熱で潤んだ。
彼はこのことを分かっているのだろうか。杏と彼がとてつもないことになっているのを。
彼がコーヒーに浮かんでいた薄い膜をスプーンでかき混ぜる。
膜はすぐに粉々になって液体の中に溶け込んでいく。
「なぁ、この後は時間あるか」
いや、分かってるわけなかった。よかった。
たぶん、よかった。
少し脱力していると、彼は返事をしない杏に何か勘ぐったのか、唇をきつく結んだまま緊張している。
そんな姿を見ると笑いそうになる。
やっぱり、気づいてない。
数年間を紡いできて、近づくことも遠ざかることも出来なかった杏達が今、先へ進んだことに。
そして、それなら。
十年後、百年後、杏達はもっともっと進んでしまうのかもしれない。
「そうだね、彼氏とデートがあるかな」
もう、透明な膜はどこかへ行った。これから杏はきっと、もっと甘えることが出来る。
今度、結婚するあの子に話を聞いてみようか。
どうやって結婚したのか、どんなことがあればそんな関係になるのか。
いつか本当に彼から結婚の相談をされても答えることが出来るように、戸惑わないようにしとかないといけない、そんな気がした。
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