過去ログ - 双葉杏「色の無い水槽」
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14:名無しNIPPER[saga]
2016/07/09(土) 01:19:51.38 ID:Px08eZlJ0

彼は居心地悪そうに、黙ったまま目の前のカップに触れる。
困ったり手持ち無沙汰になったりすると意味もなく目の前のものを手にとろうとするのは変わらない彼の癖だ。

これから一年経っても十年経っても、杏はそんな彼の仕草を見ているような気がした。


十年経っても、百年経っても。


今までの妙な空気と彼の行動が重なって、ふと疑問が浮かぶ。
杏と彼は合わない。それはもう徹底的に合わない。杏と彼は水と油だった。当然、杏が水で彼が油だ。
けど、合わないということが決定的なものでもなかったから、今まで杏達は一緒にいることが出来た。
それは口に出さなくてもお互い分かっていて、装飾のない会話だけが杏達には許されていた。

それなら、もしかしたら。
もしかしたらこれは違うんじゃないか。
今までにない、どこかちぐはぐで気持ちを持て余すようなこの会話は、心の奥底をくすぐられるようなこの違和感は、モヤモヤするだけで終わるだけの単純なものではないのかもしれない。


錆びついた歯車がキシキシと不協和音を鳴らす。
無理をすればすぐに壊れてしまいそうなくらい不安定だけど、確かに動いている、そんな音が聞こえた。


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