過去ログ - 櫻井桃華「わたくしの初恋」
1- 20
2: ◆tO1d2pMtBGwv[sage]
2016/07/09(土) 17:59:41.37 ID:VtQIqxAQo
初等部を卒業してすらいなかった頃の話です。
当時、わたくしはアイドルというものをしておりました。
……はい、そのアイドルです。
嘘のような話ですが、本当のことです。
わたくし自身、夢か幻だったのではないかと思うときもあります。
以下略



3: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 18:33:54.11 ID:VtQIqxAQo
さて、話を進めましょう。

当時のわたくしは、アイドルとしてのパートナーたる殿方のことをお慕いしておりました。

……はい、わたくしをアイドルの世界へ導いてくださった方です。
以下略



4: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 19:05:44.96 ID:VtQIqxAQo
Pさんの元には様々なアイドルがおりましたが、彼は誰かを特別扱いすることはありませんでした。
それはわたくしも同様です。
その人の人気や、後ろだてに左右されず、皆を同じようにに扱いました。

……お仕事の量や内容だけはその限りではありませんでしたが、アイドルというものを考えると致し方ないことでしょう。


5: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 19:16:20.39 ID:VtQIqxAQo
そんな彼でしたから、思いを寄せる方は少なくありませんでした。
ですが、彼はそれらをすべて冗談目かし、交わすのです。
わたくしも、幼いながらに彼に何度も思いを伝えました。
あるときなど、思い切って婚約を迫ったこともあります。
しかし、Pさんはわたくしが年を重ねて成長したら考える、などと、当たり障りのない言葉を返すだけでした。


6: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:11:46.01 ID:VtQIqxAQo
それでもわたくしは彼を慕い続けました。
当時のわたくしは、将来彼と結ばれることをなんら疑っていなかったのです。

……そう、あのときまでは



7: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:14:01.59 ID:VtQIqxAQo
秋の夜長のときです。
彼の家族が交通事故を起こしました。


8: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:22:05.13 ID:VtQIqxAQo
事故が起きた当初、そのことを知るのは一握りの者だけでした。
とはいえ、彼をひと目見れば、何かが起きたことは、幼いわたくしですら容易にわかりました。
それほどに、当時の彼は追い詰められていたのです。
やがて、彼の家族が事故のために莫大な賠償金を背負ったことは誰もの知るところとなりました


9: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:26:47.15 ID:VtQIqxAQo
それを知ったわたくしの行動は早いものでした。
お父様に彼へお金を貸してもらえるもらえるよう頼んだのです。
……しかし、お父様の反応は芳しくありませんでした。
わたくしは憤慨しました。
Pさんにそれだけの価値がないと言われたような気がしたからです。


10: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:32:47.55 ID:VtQIqxAQo
わたくしは彼がいかに素晴らしい人物であるかを言葉の限り訴えました。

その熱意……いえ、頑迷さに充てられたのか、お父様はある日わたくしに話してくれたのです


11: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:37:50.03 ID:VtQIqxAQo
いわく、彼はそれだけの人物である、しかし、お金の重みは彼を変えてしまうだろうと。

わたくしにはその言葉が理解できませんでした。
お父様により詳細に教えて頂くよう頼みましたが、言葉を濁すだけで、答えてはくれませんでした。

以下略



12: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:43:43.20 ID:VtQIqxAQo
重石をなくした彼はまた元の魔法使いへと戻ったように見えました。

……けれど、それは誤りでした。
彼は別の重石を課せられただけだったのです。


26Res/6.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice