6: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:11:46.01 ID:VtQIqxAQo
 それでもわたくしは彼を慕い続けました。 
 当時のわたくしは、将来彼と結ばれることをなんら疑っていなかったのです。 
  
 ……そう、あのときまでは 
  
7: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:14:01.59 ID:VtQIqxAQo
 秋の夜長のときです。 
 彼の家族が交通事故を起こしました。 
8: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:22:05.13 ID:VtQIqxAQo
 事故が起きた当初、そのことを知るのは一握りの者だけでした。 
 とはいえ、彼をひと目見れば、何かが起きたことは、幼いわたくしですら容易にわかりました。 
 それほどに、当時の彼は追い詰められていたのです。 
 やがて、彼の家族が事故のために莫大な賠償金を背負ったことは誰もの知るところとなりました 
9: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:26:47.15 ID:VtQIqxAQo
 それを知ったわたくしの行動は早いものでした。 
 お父様に彼へお金を貸してもらえるもらえるよう頼んだのです。 
 ……しかし、お父様の反応は芳しくありませんでした。 
 わたくしは憤慨しました。 
 Pさんにそれだけの価値がないと言われたような気がしたからです。 
10: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:32:47.55 ID:VtQIqxAQo
 わたくしは彼がいかに素晴らしい人物であるかを言葉の限り訴えました。 
  
 その熱意……いえ、頑迷さに充てられたのか、お父様はある日わたくしに話してくれたのです 
11: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:37:50.03 ID:VtQIqxAQo
 いわく、彼はそれだけの人物である、しかし、お金の重みは彼を変えてしまうだろうと。 
  
 わたくしにはその言葉が理解できませんでした。 
 お父様により詳細に教えて頂くよう頼みましたが、言葉を濁すだけで、答えてはくれませんでした。 
  
12: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:43:43.20 ID:VtQIqxAQo
 重石をなくした彼はまた元の魔法使いへと戻ったように見えました。 
  
 ……けれど、それは誤りでした。 
 彼は別の重石を課せられただけだったのです。 
13: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:47:03.36 ID:VtQIqxAQo
 しばらくすると、彼の変貌は明らかになっていきました。 
  
 彼がかける魔法は以前とかわらず、輝きを引き出しました。 
 ……ただし、わたくしだけはその魔法をかけてもらえなくなったのです。 
14: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:49:37.15 ID:VtQIqxAQo
 彼は目に見えてわたくしをひいきするようになりました。 
 他のアイドルを追いやってわたくしに仕事を与えました。 
 わたくしは何度も彼に同じように扱ってくれるように頼みました。 
 けれど、彼が変わることはありませんでした。 
15: ◆tO1d2pMtBGwv[sage saga]
2016/07/09(土) 20:51:15.00 ID:VtQIqxAQo
 やがて、わたくしはお父様の言葉の意味を理解しました。 
 そして、考えたのです。 
 彼から重石を取り除く方法を。 
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