24: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:24:07.13 ID:z6mFNZbg0
「……ああ……そ、そうですか!」
「うん。こんなのじゃ参考にならないかもしれないけど……」
25: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:25:35.60 ID:z6mFNZbg0
「いやぁっ!いやあああああああああああ!」
誰かの声がすぐ近くで響いた。
26: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:26:30.53 ID:z6mFNZbg0
獣の咆哮が聞こえた。
怪物が今まさに私たちを食らおうと喉を鳴らしている。
27: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:28:02.37 ID:z6mFNZbg0
「助けて!」
叫び声がうるさい。
28: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:29:17.91 ID:z6mFNZbg0
目も耳も息さえもふさがれた。
私は誰かを掴もうともがいた。
29: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:31:21.07 ID:z6mFNZbg0
ここはもう怪物の胃の中だ。
このまま私は消えていく。
30: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:33:44.10 ID:z6mFNZbg0
私と母の戦車の音だった。
その音はいつも軽快で、母の微笑みを届けてくれた。
31: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:35:32.02 ID:z6mFNZbg0
「う〜ん、そうねぇ。難しいけど、きっと小梅にも分かるときがくるわよ。大きくなったらね」
「わかんない!ず〜っとわかんない!」
32: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:36:57.07 ID:z6mFNZbg0
「ねぇ、そのお墓の人の名前はなんて書いてあった?」
「わかんない。漢字だから読めなかった。お母さん知ってるの?」
33: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:40:24.64 ID:z6mFNZbg0
彼は私たちの町、熊本県甲佐町に生まれた。
昭和9年に陸軍士官学校を卒業し、満州事変で出征した。
34: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:42:26.70 ID:z6mFNZbg0
辛うじて命を取り留めたものの、彼は一生自力では立てない体となり前線から退くことになる。
昭和14年、地元熊本に戻った彼は結婚し、やがて2人の娘を授かった。
58Res/26.52 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。