2: ◆hxGgtPv0f.
2016/07/22(金) 18:24:27.31 ID:N7BH6Wdqo
そこで私は、親愛なるジェリーちゃんの飼育に全力を尽くすことにした。
エアポンプを設置し、人工海水を作ってこまめに水を換えた。
水温計を見て、温度調整にも細心の注意を払った。
3: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:25:19.26 ID:N7BH6Wdqo
生き物を飼うのに消極的だった私が、どうしてここまでクラゲの飼育に情熱を傾けたのか、今でもよく分からない。
おそらく当時の私は、自分の世界を無くしてしまって、それを一から創造せねばならないところまで追い込まれていたのだ。
4: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:25:59.99 ID:N7BH6Wdqo
別に自分の境遇が特別だというつもりはない。
誰にでも、天地創造をしなければならないお年頃がいつか訪れる。それだけの話だ。
「海あれ」
5: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:27:13.89 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「ジェリーちゃん」
梨子 「何だい、梨子ちゃん」
梨子 「住み心地はどうかな」
6: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:27:54.10 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「ふふふ、ヘンなこと言うのね、ジェリーちゃん」
梨子 「どうして?」
梨子 「だってこのアクアリウムには、あなたしかいないのよ」
7: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:29:51.69 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「自分と友達になってから、外の世界に友達をつくりにいけばいいじゃない」
梨子 「外の世界って、どこにあるの?」
梨子 「この水槽の外にあるんだよ。
8: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:30:50.84 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「そんなこと、いったい誰が決めたの?」
梨子 「あなたを捕まえて閉じこめた、この私が決めたのよ」
梨子 「そんなのひどくない?
9: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:31:47.16 ID:N7BH6Wdqo
それから間もなく、春休みが終わり、新学期が始まった。
着慣れない制服を身につけて自分の部屋を出る前に、私は水槽の傍で立ち止まった。
梨子 「ねえ、梨子ちゃん」
10: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:32:39.68 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「そんなことはないよ。
新しい靴を履いて、新しい制服を着て、新しいバスに乗って、新しい友達をつくりに行くんだよ」
梨子 「それでも、どこに行ったって、おんなじなのよ」
11: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:33:31.89 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「そんなことないよ。
ピアノが弾けなくても、梨子ちゃんのことを好きになってくれる人はいるよ」
梨子 「そんなこと、私は信じないわ」
12: ◆hxGgtPv0f.[sage]
2016/07/22(金) 18:34:02.77 ID:N7BH6Wdqo
梨子 「……うるせえ、クラゲ!」
梨子 「言いやがったな、このヒトデナシ!」
梨子 「ヒトデじゃねえ、クラゲだ!」
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