14: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/07/28(木) 20:32:03.53 ID:pU98D89e0
「それでどうだった?」
速水さんを見送ったあとに訪れた喫煙室。先輩は煙を吐きながらなんでもなさそうに訊ねてきた。
俺はわざとらしくがっくりとうなだれて、煙とため息を吐いて見せる。ちょっとした嫌がらせだ。
思惑通り、先輩は焦ったようだった。
「えっ、まじ。駄目だった?」
「冗談です」
「てめえ……」
先輩はぐっと拳を握る。怖いので視線を逸らす。
「なかなか気難しい娘ですね。ずっと探り合いって感じでしたよ」
「速水は掴み所がないんだよな。距離を取って自分を守ってるのかもしれない。私たちが思っている以上に繊細なんだろうぜ」
あるいは諦観しているのか。いずれにせよ、人付き合いが苦手とまではいかなくとも、踏み込むのも踏み込まれるのも得意ではなさそうだった。
「でしょうね。……面倒くさいな、俺には向かないと思うんですけど」
「お前のほうが面倒くせえよ。だから任せてるってのもあるんだが。お前は距離感絶妙だしな」
「過大評価ですよ……、そういや速水さんってもうデビューしてるんですよね」
資料によると一ヶ月前にCD一枚をリリースしている。売れ行きは最低ラインといったところか。ただ、その後は大した仕事もなく、今のところ予定もない。
直近では雑誌の企画で複数のアイドルと一緒に写った写真が数枚だけ。こう言っちゃなんだが、もったいないと思う。
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