21: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/07/29(金) 02:14:24.45 ID:uqaGoxoH0
「なるほどねぇ」
本番さながらに歌って踊る速水さんを眺める。
幸いと言うべきか、残念ながらと言うべきか、俺はすぐにトレーナーさんの言葉の意味を理解した。
たしかにこれは言葉にし辛い。
強いていうなら違和感と表現するべきだろうか。
「わかりましたか」
いつの間にか隣に立っていたトレーナーさんは、困り気味にそう言った。俺はええと返事して、問題点を見つけるため観察を続ける。
「奏ちゃんに技術的な問題点はありません。はっきり言って、このプロダクションのなかでも上位に食い込めるだけの実力があります」
「なんですかねこれは。ボーカルもダンスも巧いのに、惹きつけられるものがない」
「だから、気持ちの問題なのかもしれません」
「気持ちですか……、なにか聞いてたりします?」
「いえ。だけど、ええと、憶測なんですけど……」
言い淀むトレーナーさん。不思議に思って座ったまま顔を覗き込むと、彼女は気まずそうに目を逸らした。
「憶測で構わないんで聞かせてもらえませんか」
「えっ、あの、たぶんわからなくなったんじゃないかなって」
「わからなく……」
「ほら、奏ちゃんは巧いんです。でも、人気のあるアイドルが必ずしも巧いわけじゃないし……それに」
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