83: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/07(日) 03:59:58.28 ID:WVC8K8YCO
軽快なメロディーと共にラジオは始まる。
速水さんは落ち着いた様子だった。どうやら緊張しているのは俺だけらしい。
「デレっす島村卯月です!」
「デレっす、渋谷凛だよ」
「デレっす! 城ヶ崎美嘉だよー!」
「今日はクールなアイドルがゲストに来てくれたよ」
「デレっす、速水奏よ。よろしくね」
「よろしく。久しぶりだね、調子はどう?」
「絶好調とまではいかなくとも、それなりにはいいわね」
「そうだねっ、この前より元気そうに見えるよ」
「美嘉ちゃんの現場を見学したんでしたっけ?」
「ええ、美嘉の仕事を学びに行ったの。真剣に取り組む姿勢は格好よかったわ」
「やめてよー、照れるじゃん」
「うん、美嘉ってこう見えて真面目だからね」
「すごく大人っぽかったわよ」
「それは奏でしょ!」
「たしかに、大人な女性って感じがします!」
「よく言われるわ。あっ、でも最近は子供扱いされるの。ひどいと思わない?」
「あー、奏のプロデューサーなかなかの曲者だもんねぇ……」
「なんか実感篭ってるけど、どうかしたの」
「いやぁ、ここじゃ言えないかなー、あははは」
番組は無事進行していた。言葉に詰まったりしないか不安だったが、杞憂に終わりそうだ。
先輩は感慨深そうにうなずいた。
「なんだ、思ったよりもずっと上手くいってるな。お前に任せてよかったよ」
「いえ、俺はほとんどなにもしてませんよ。先輩が準備してくれたおかげで、速水さんも色々考える時間ができたんです」
「そうだといいんだがなぁ。……速水には悪いことしたよ。いまいち理解してやれなかった。今こうして笑ってる姿を見ると安心する。お前はよくやってくれてるよ、ありがとう」
「……殊勝な先輩って気持ち悪いですね」
「うるせー」
肩を小突かれた。照れ隠しだろう。
俺たちは小さく笑った。みんなそれぞれ悩みを抱えている。そう思うと、少しだけ気持ちが和らいだ。
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