7:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:31:13.52 ID:k0/bWBKq0
部屋の観察を終えて今度は正面に座る男を見た。
年の頃は三十代中頃位で中肉中背。
白いワイシャツに濃い赤と青のストライプのネクタイをしている。スーツは着ていない。
彼の顔は特にこれと言った特徴が無かった。
多分僕に予備知識が無く街ですれ違えば彼と出会った事など一生思い出す事などないだろう。
8:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:32:13.42 ID:k0/bWBKq0
「…あの」
僕の言葉にエリート風上司は「うん」と頷いた。
「…名前を…」
9:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:33:09.73 ID:k0/bWBKq0
「いや、色の名前じゃ無いよ…村崎と言う名前なんだ」
どうやらエリート風のムラサキは僕の心を見透かす事が出来るらしい。
いや、それとも僕が顔に出やすいタイプなのかも知れない。
…てか、どうでも良い。つーか、長い。
10:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:34:16.98 ID:k0/bWBKq0
ムラサキのシャーペンのコンコンがやたらと激しくなってきた。どうやら彼も少しイライラし始めたらしい。
これ以上彼を怒らせてはいけないのかもしれないんだが…
「じゃあ…どこから…」
「いやだから、どこからでも良いんだよ…ただ君の住所とか電話番号とかはもう良いよ。本当に」
11:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:35:08.13 ID:k0/bWBKq0
ただこれ以上は本当に不味そうだ。ムラサキのシャーペンが破壊されてしまうかもしれない。
「それじゃあ…かなり昔の話からでも…良いっすか?」
「もちろん構わない」
「じゃあ、千年位前からの話を…」
12:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:36:12.30 ID:k0/bWBKq0
コンコン…コンコン…コンコン。
ムラサキが奏でるそれは僕の記憶を呼び覚ます何某かの道標になったのかも知れない。
脳の片隅に海が広がる。それは太陽の陽射しをキラキラ反射している夏の海の風景だった。
「…夏休みに…」
13:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:37:05.33 ID:1/zk8vPV0
「修行に行ったんです。お祖母ちゃんの家に」
「え…?何、君…忍者か何かなの?」
「は?違いますよ。何で忍者なんすか?」
「いや…修行って言うから…」
「は?!修行って言ったら必殺技の修行に決まってるでしょ!」
14:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:38:28.51 ID:1/zk8vPV0
「スプラッシュトルネードです!」
「え?え?ス、スプラッシュ…?」
「スプラッシュトルネード…海をも切り裂くパンチですよ…ムラサキさん…!」
「…うわぁ…」
15:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:39:30.51 ID:1/zk8vPV0
「…君は本当にそれだけの為に、あの海に行ったのかい?」
ムラサキが尚も念を押す。
多分…問題無い筈だ。僕は修行に祖母の家に行った。
だが…。
16:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:40:48.94 ID:1/zk8vPV0
僕と同い年の女の子…。
青のマスクと赤いプロテクターを纏ったヒーロー。
「…奈緒…津村奈緒…」
「うん…?」
17:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:41:27.73 ID:1/zk8vPV0
ようやく完全に落ち着きを取り戻した僕は額から手を外すとムラサキに呟いた…。
「津村奈緒に…」
ムラサキはジッと僕を観察している。
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