過去ログ - 【モバマス】私「クラスメイト、一ノ瀬志希の話」
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2: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:52:31.95 ID:mFvc4esTo

 受験という漠然とした不安が迫りながらも、三年目となる高校生活の変わらない毎日に飽きを隠せなくなっていた頃、彼女は私の前に現れた。
 転校生が来る、という話は春休みの終わりには噂になっていた。私のところにも友達づてにその情報が入っていた。連絡網よろしく私は別の友達に転校生の話を渡してやった。友達はあれやこれやと空想を働かせては私に聞かせてきたが、私にはどうでもよかった。
 その転校生がどんなやつでどんな事情を持っていても、所詮一年しかない付き合いだし、同じクラスになるかもわからない。仮になったとしても今と同じように、そいつとも適当に付き合うだけだ。
 そう思っていた。


3: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:53:21.13 ID:mFvc4esTo
 私は昔、アイドルになりたかった。
 なにも珍しい話じゃない。たぶん、クラスの女子のほとんどは一度はその夢を抱いて、一度はオーディションに書類を送ったことがあるだろう。そして一次選考も通らずに自分を知る。
 私たち、普通の女の子が通る道だ。
 いまさらなぜそんなことを思い出したのかと言えば、転校生のせいだった。

以下略



4: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:54:00.86 ID:mFvc4esTo
 彼女は私の一つ後ろの席に座ることになった。池田望の私は出席番号一番で、彼女が二番だった。
 始業式が終わり、放課後になると彼女の周りを女子が囲んだ。色々と質問攻めするのを尻目に、私は教室を後にした。彼女を取り囲む女子を遠巻きに見ている男子も少なくなかった。
 だけど、女子と違って男子はそうそう簡単に話しかけられないだろう。そこらに偏在する普通の女の子と彼女は違うのだ。
 家に帰ってから、いつもどおりに過ごした。いつもと違うことと言えば、お風呂の鏡で自分の顔を見る時間がすこしだけ長かったことだろうか。
 やっぱりそこに映っていたのは、どこにでもいそうな普通の女の子の顔だった。
以下略



5: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:54:31.68 ID:mFvc4esTo

 何人かとメールしながらテレビを見ていると、クイズ番組にアイドルが出ていた。出された問題の回答を一生懸命な顔で書いているが、とんちんかんな答えだった。そんな姿も可愛いと讃えられるのがアイドルだ。実際、彼女は女の私の目から見ても可愛いと思う。

「大したことないな」

以下略



6: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:54:58.42 ID:mFvc4esTo

 一ノ瀬志希と初めて会話したのは翌日の昼休みのことだった。

「ねえ、給食は?」

以下略



7: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:55:25.57 ID:mFvc4esTo

「いいの?」
「うん。明日からは何か用意してきなよ。お母さんに言うとかさ」
「あたし一人暮らしなんだよねー」

以下略



8: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:55:53.20 ID:mFvc4esTo

 それを彼女に聞くと、笑いながら答えてくれた。

「だって、女子高生だよ? JKだよー?」
「私に言われても意味わかんない」
以下略



9: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:56:30.06 ID:mFvc4esTo

 一ノ瀬志希が本物だとわかったのはゴールデンウィーク前にやった実力試験の結果が帰ってきたときだった。
 それまでの授業で、彼女は基本的にノートを取っていなかった。目の前に座る私には知る由もなかったのだけど、彼女の授業態度は不真面目そのものらしかった。ノートは開くだけで、教科書もページをめくらない。というかほぼずっと寝てる。その寝顔が可愛い。とか、そんな話がメールで回ってきた。
 私は、彼女が先生に指されて正解を答えているところしか知らなかったので、なんだか意外だった。
 試験があるのにこのままでいいのかな、なんて悪口みたいなのと一緒にその話を聞いた私は、一応彼女に試験があることを伝えたりもした。
以下略



10: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:56:57.66 ID:mFvc4esTo

 私は得意科目も苦手科目もない人間だ。どの教科も平均点よりちょっとだけ上というのがいつものことだった。
 ただ、今回は全部の科目が平均点以下だった。そこそこ勉強してるし、一応受験生ということもあって去年よりは勉強時間を増やして、予備校にも通っている。それなのに、全部が平均点以下だというのはさすがに焦りを覚えた。
 やばいな、と思ってその不安を解消するために後ろの席に振り返る。人間誰しも自分より下の人間がいると安心するものだ。

以下略



11: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:57:26.46 ID:mFvc4esTo

「カンニング?」
「違うよー」
「あんた頭良かったんだ」
「ギフテッドだからねー」
以下略



12: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 20:57:53.15 ID:mFvc4esTo

「ちなみにアメリカではなんの研究してたの?」
「主にケミカル」

 ええと、と首を傾げる。なんだっけ、と頭の単語帳をめくるよりも早く彼女が続けていく。
以下略



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