過去ログ - 「喧々囂々、全てを呑み込むこの街で」
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10: ◆XkFHc6ejAk[saga ]
2016/08/12(金) 13:30:05.34 ID:Xo9GuVjR0
男は廃遊園地の門を蹴り破りました。老朽化が激しいせいで、簡単に折る事が出来たようです。

人から忘れ去られたその広場では、ただひたすらに物悲しい風が男を撫でます。

派手な原色で彩られたマスコットキャラクターは、錆びついてもなおその笑顔を保っています。

「薄気味悪い所だ」

男は指を鳴らすと、多数のウィルオウィスプを探索に向かわせました。

まさか「それ」が居るとは思っていませんが、何かの手掛かりを探しているのでしょう。

そもそも、この廃遊園地自体、存在しているのがおかしいのです。

この欲望の街「イサクラ」で、何故児童向けの遊園地が建設されたのでしょうか?

そもそも、これはいつから存在しているのでしょうか?

何故こんな町はずれにぽつりと立っているのでしょうか?

様々な恐怖がこの街には存在しますが、それでも此処は特に「薄気味悪い」と誰もが口をそろえ、近寄る者はいません。

(クスリの取引場か? いや、こんな場所でやる訳ねえか。場所はいくらでもある……ん?)

「!」

男は思わず身構えました。何故か、誰も乗っていないメリーゴーランドが、回り出したのです。

(……どうなってる? 霊でも住み着いてんのか?)

男は魔力を媒介にウィルオウィスプを召喚するので、霊の持つ独特なオーラはよく知っています。

しかし、この場所からは、もっと嫌なものを感じます。

それは無言の怨念のような……常に何かに見られているような……一言で言うと、「不気味」なのです。

気が付けば、つい先ほどまでは普通の空だったのですが、いつの間にか黒い雲で覆われていました。

示し合わせていたかのように、弾丸のような雨が降り始めます。

(チッ……ウィルオウィスプも駄目だ。引き上げるか)

男は舌打ちをすると、くるりと踵を返して元の道を戻り始めました。

やけに冷え切った背筋は、どうやら雨に濡れているからではないようです。


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