過去ログ - 「喧々囂々、全てを呑み込むこの街で」
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12: ◆XkFHc6ejAk[saga ]
2016/08/12(金) 13:33:59.06 ID:Xo9GuVjR0
「最近物騒だよなぁ」

「ああ……一体どんな奴なんだろうなぁ」

何処に行っても、街は「霧の怪物」の噂で持ちきりです。

酒場では、やれ「イサクラ」の化身だの、罰を与えに死の世界から来た使者だの、根も葉もない噂が喧しく飛び交っています。

しかし、霧と共に現れるせいで、その姿は未だ謎に包まれています。

酒飲み二人はそんな事を言い合いながら、仲良く小便を始めました。

「……ん? 月が見えない」

「月って言うか……お、おい。これって」

気が付けば、辺り一面に白い霧が漂っていました。

それも、かなり濃い霧です。ゆらりと広がる濃霧は、つい先ほどまで傍に居た相方の居場所すら、分からなくしてしまいました。

「おい、おーい!」

酒飲みは大声を上げましたが、相方の返事は聞こえません。

(や、やべえ……とにかく逃げないと)

酒飲みは背中を向けて走り始めましたが、一向に霧は晴れません。

(これは……進んでいるのか? 感覚が……)

酒飲みの感覚がぼやけているのは、どうやら酔っぱらっているからだけではないようです。

「――ッ……」

酒飲みは思わず呼吸を止めてしまいました。

少し奥に、何かがいます。


「オオォオ……オォオオ……ォオォ……ォオォオォ……」


それは何千人もの亡者のうめき声を、一つに纏めたような、太くて低い、悍ましい「声」。

ズズ……ズズズッ……。何かが這いずってきます。

(な、なんだ……あれは……)

その姿を認識する前に、何かが勢いよく飛び出し、酒飲みの意識はそこで途絶えました。


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