過去ログ - 「喧々囂々、全てを呑み込むこの街で」
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◆XkFHc6ejAk
[saga]
2016/08/12(金) 15:31:48.67 ID:Xo9GuVjR0
「……死ね!!」
激昂した一人が、仲間を振り切って男に突撃します。
左脇の刀に手を添えると、そのまま疾風のごとく風属性の斬撃を放ちました。
男は爪を尖らせ、腕を振るった豪快な一撃で、その斬撃を掻き消します。そのまま身体を捻りながら斜めに飛ぶと同時に、力を込めてナイフを投げました。
回避した黒フードの少年ですが、そのまま次々と飛ばされるナイフをさばき切れないようです。
ああ。ついに少年の太ももに深々と突き刺さってしまいました。もう動けないでしょう。
「おい、引くぞ! 一番強いユウを倒しただけある! あいつに相談しよう!」
「ぐっ……あ……?」
手を貸してもらった少年の身体が、ぐらりと揺れて倒れます、
「まさか……」
「もちろん毒ナイフだ。俺にとっちゃ大した毒じゃねえが……あのガキのよりは強いぞ」
「ッ……てっめええええぇえぇ!」
大柄な少年が男に飛び掛かります。力任せに跳躍すると、両手から火球を連続で放ちました。
(効いてない……!?)
男は防御すらしませんでした。全てを受けとめ、つまらなさそうに舌打ちをします。
男は炎が得意なので、火属性の耐性が非常に高いようです。彼にとってはそよ風が通ったようなものでしょう。
「……駄目だ! 戦うな! 逃げるぞ!」
黒フードの集団は、リーダーらしき少年の声と共に、一斉に逃げ去っていきました。唯一、大柄な少年が男に立ちふさがっています。
「お前なあ……弱い技を連発したところで、格上には勝てねえぞ?」
男はナイフの一本を手に取ると、それをウィルオウィスプで覆い、少年の腹に撃ちました。
小さな爆発と共に少年の身体が宙を舞い、壁に叩きつけられます。腹にはナイフが根元まで深々と突き刺さっているようです。
「さて、お前らは……何だ? あのガキといい、何がしたい?」
「無駄な時間を使いたくねえんだ。早くしろ」
男はそういうと、動けない少年にナイフを突き刺しました。
「ぎゃっ……あああああああああああ!!」
「うるせえよ。ガキはすぐピーピー泣く」
「ああああああああああっ……! い、痛いいいぃいぃい!!」
「死ぬ前に早く答えろ。ナイフを何本も使いたくねえんだ」
「……お、お前が来てたから……気付いたんじゃないかと思って……」
「気付いた?」
「……う、ううううううぅうぅううぅ……ぎっ」
「続きを言え」
良く見ると、少年の様子が変です。身体がぶるぶると震え、冷や汗をかき始めました。過呼吸を起こし、目の焦点もあっていません。
「おい!」
「かっ……ひゅっ……」
最後に蚊の鳴くような声を出して、少年は死んでしまいました。
「……何だこりゃ。口封じの呪いでも掛けられてたのか?」
(「来てたから」 「気付いた」……あの遊園地の事か?)
男は黒フードの集団を思い浮かべました。あの小さな子供達は、一体何者なのでしょう?
ただのストリートチルドレンにしては、襲撃が計画的で、引き際も素早いものでした。おそらく、男の実力を図るためだけに来たのでしょう。
「あいつ」に相談……参謀のような人物がいることも明らかです。
「……」
歩き出す男の背中を、三日月が静かに照らしていました。
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