過去ログ - 「喧々囂々、全てを呑み込むこの街で」
1- 20
21: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/08/12(金) 15:31:48.67 ID:Xo9GuVjR0
「……死ね!!」

激昂した一人が、仲間を振り切って男に突撃します。

左脇の刀に手を添えると、そのまま疾風のごとく風属性の斬撃を放ちました。

男は爪を尖らせ、腕を振るった豪快な一撃で、その斬撃を掻き消します。そのまま身体を捻りながら斜めに飛ぶと同時に、力を込めてナイフを投げました。

回避した黒フードの少年ですが、そのまま次々と飛ばされるナイフをさばき切れないようです。

ああ。ついに少年の太ももに深々と突き刺さってしまいました。もう動けないでしょう。

「おい、引くぞ! 一番強いユウを倒しただけある! あいつに相談しよう!」

「ぐっ……あ……?」

手を貸してもらった少年の身体が、ぐらりと揺れて倒れます、

「まさか……」

「もちろん毒ナイフだ。俺にとっちゃ大した毒じゃねえが……あのガキのよりは強いぞ」

「ッ……てっめええええぇえぇ!」

大柄な少年が男に飛び掛かります。力任せに跳躍すると、両手から火球を連続で放ちました。

(効いてない……!?)

男は防御すらしませんでした。全てを受けとめ、つまらなさそうに舌打ちをします。

男は炎が得意なので、火属性の耐性が非常に高いようです。彼にとってはそよ風が通ったようなものでしょう。

「……駄目だ! 戦うな! 逃げるぞ!」

黒フードの集団は、リーダーらしき少年の声と共に、一斉に逃げ去っていきました。唯一、大柄な少年が男に立ちふさがっています。

「お前なあ……弱い技を連発したところで、格上には勝てねえぞ?」

男はナイフの一本を手に取ると、それをウィルオウィスプで覆い、少年の腹に撃ちました。

小さな爆発と共に少年の身体が宙を舞い、壁に叩きつけられます。腹にはナイフが根元まで深々と突き刺さっているようです。

「さて、お前らは……何だ? あのガキといい、何がしたい?」

「無駄な時間を使いたくねえんだ。早くしろ」

男はそういうと、動けない少年にナイフを突き刺しました。

「ぎゃっ……あああああああああああ!!」

「うるせえよ。ガキはすぐピーピー泣く」

「ああああああああああっ……! い、痛いいいぃいぃい!!」

「死ぬ前に早く答えろ。ナイフを何本も使いたくねえんだ」

「……お、お前が来てたから……気付いたんじゃないかと思って……」

「気付いた?」

「……う、ううううううぅうぅううぅ……ぎっ」

「続きを言え」

良く見ると、少年の様子が変です。身体がぶるぶると震え、冷や汗をかき始めました。過呼吸を起こし、目の焦点もあっていません。

「おい!」

「かっ……ひゅっ……」

最後に蚊の鳴くような声を出して、少年は死んでしまいました。

「……何だこりゃ。口封じの呪いでも掛けられてたのか?」

(「来てたから」 「気付いた」……あの遊園地の事か?)

男は黒フードの集団を思い浮かべました。あの小さな子供達は、一体何者なのでしょう?

ただのストリートチルドレンにしては、襲撃が計画的で、引き際も素早いものでした。おそらく、男の実力を図るためだけに来たのでしょう。

「あいつ」に相談……参謀のような人物がいることも明らかです。

「……」

歩き出す男の背中を、三日月が静かに照らしていました。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
41Res/40.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice