105:名無しNIPPER
2016/08/20(土) 09:24:25.08 ID:D33bbYIF0
「どうかしたんですか?」
「いや、こっちの話」
そうですか、と返事をすると、ナナコは興味なさそうに前を向いた。
イチは落ち着かなさそうにポニーテールを撫でている。
黙って歩く。
自転車置き場までくると、ナナコが「今日私チャリなので」と言って、自転車の群れの中に飲み込まれていった。
手を振って、イチと二人で歩く。
黙って歩いていると、いつの間にか、俺の方が少し前を歩いていた。
いつもは俺の方が遅いのに。
振り返ってイチを見ると、はっ、と顔を上げて、横に並んだ。
「どうかしたの?」
悩み事でもあるのかと、一応声をかける。
ここで悩み事を明かされても、自分にはなんとかする技量なんて、残念ながらないんだけど。
「あー、えっと……鍵、忘れちゃって」
「鍵」
技量がどうこうの問題じゃなかった。
「きょうだいとかいないの?」
いれば、今日は帰るの早いし、鍵は開くと思うけど……
「……いない」
詰んだ。
「……どこか寄って、時間潰すか」
そう提案すると、イチはこくんと頷いて、また歩き出した。
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