119:名無しNIPPER
2016/08/20(土) 21:44:28.52 ID:D33bbYIF0
「なんでウチの駅で降りたの? もう何駅かいけば、街中に出るのに……」
確かに、ここから電車で一時間ちょっと揺られれば、地方都市の街中に出る。
そこまで行けば、高い建物もあるし、歩き回っても畑なんて見当たらない。
「私が住んでるのがわかってたから、一緒に住まわせてもらおうと思った……とか、かな」
ねえちゃんは目線を彷徨わせながら、左手で髪を耳にかける。
「…………」
焦っている時の仕草だ。
「でも、小学六年生の子がどうやって住所を調べたの……?」
イチの質問に、ねえちゃんは首をかしげるだけだった。
が、今はそんなことはどうでもいい。
田舎とはいえ、その女の子からすれば、初めて来た土地だろう。
俺たちにとっては慣れ親しんだ簡単な道でも、女の子にとっては巨大な迷路だ。早く見つけてあげないと。
ねえちゃんは一見、いつも通りの淡々とした様子に見えるが、よく見ると、明らかに動揺している。
髪は整っていないし、目線が落ち着かない。
まあ無理もないだろう。十二歳の女の子が、自分を頼って電車に乗ってここまで来たのに、迷子になってしまって、連絡を取る手段すらないのだ。
誰だって焦る。
どうにかしないと。
そわそわしているイチに目配せをして、もう一度探しに行こうと、立ち上がる。
イチにはねえちゃんと一緒に行動してもらおう。焦っている人は一人にはしておけない。
と、ねえちゃんに声をかけようとしていると、後ろから声がかけられた。
「おーい」
イケメン君だ。
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