過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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131:名無しNIPPER
2016/08/21(日) 20:11:19.23 ID:Rgdwxjz5O
 ちなみに、この辺りの地域で言う駄菓子屋とは、『そらを』の事を指す。
 そらを。店の名前だ。

 まあ、その名の通り、空尾さん家が切り盛りしている小さい店だ。

 近所の小学生なら、一度はお世話になったことがあるはずだ。
 俺も、昔はよく百円を握らされて行ったものだ。

 ところであの店のお爺ちゃん、元気かな。
 だいぶ歳をとってたみたいだけど、もう何年も行っていないので、様子は分からなかった。

「ここ?」

「ここだね」

 あいにく、まだ営業はしていないようだった。
 シャッターが降りている。

 昔はもっと早くからやっていたような気がするんだけど。何年も経てば変わるものか。

 イチが何やらスマホをいじっている。

「もうすぐ開くよー」

 スマホを閉じて、イチがムギちゃんに話しかける。

「え?」

「え?」

 ムギちゃんと顔を合わせて、首をかしげる。ネットに営業時間でも載っていたのだろうか。

 三人で並んで待っていると、後ろから声がかけられた。

「人の家の前で何突っ立ってるんですか」

 振り返ると、ムギちゃんほどではないけど、背の低い女の子。

 ……ナナコ。

「……なんでこんな朝っぱらから?」

「私のセリフですよ!」

 そう言い捨てると、ナナコは背伸びをしながら、シャッターを上に押し上げた。

「空尾……ナナコ……あっ」

「え、知らなかったの?」

 普段呼ぶことがないのでピンとこなかったが、ナナコの苗字は空尾だ。
 ということはつまり、

「ここは私の家ですよ」

 ……つまり、空尾菜々子の家は、駄菓子屋だったのか。

『はい、お店をやっているので』

 そういえば、夏休みに入る前に、そんなことを聞いた覚えがある。
 このことだったのか。

「逆に知らなかったんだね……」

 同級生の間では有名らしい。

 ……だって、同級生で話す人なんて、そんなにいないし。限られた人しかほとんど話さないし。


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