過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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269:名無しNIPPER[saga]
2016/08/26(金) 22:19:16.70 ID:qsBzmbI/0
 まず、間違いなく、明日にはムギちゃんはいなくなる。
 家に帰る。当たり前のことだ。

 そうしてしまうと、ハルとなーちゃんとはどうなのだろうか。それに、チヨも。

 部長はよく子供たちと遊んでくれているが、そうなってしまうと、じゃあどうなるのか。

 そう考えると、無性に不安になる。
 学校が始まれば時間も減るし、当たり前のことなんだけど。
 そもそも夏休みという時間そのものが、特別な雰囲気を持った時間なのだ。

 大きな花火が連続ではじける。
 俺は驚いて、目を細めた。
 少し遅れて、これまでとは比べ物にならない爆音が耳に響いた。

 ーーだから、その日、コヨミちゃんから聴いた言葉は、
 少なからず、俺を動揺させるだけの力はあった。

「あの、先輩」

 ーー言われないと思っていた……とは、言い切れない。

「わたし、その」

 ーーでも、自分に、自惚れるなよ、と言い聞かせてきた。

 コヨミちゃんが、息を吸った音が聴こえる。 震えていた。

「……先輩」

 ーーただ、申し訳ないけど、コヨミちゃんのその言葉を聞いて、
 今の俺は、

「好き、です。」

 ーー嬉しくは、なかった。

 ……夜空は、花火の煙で曇っている。

 こういう時に限って、花火は会話の邪魔をしてはくれない。


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