過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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272:名無しNIPPER[saga]
2016/08/26(金) 22:25:29.31 ID:qsBzmbI/0
「……うん、ごめん」

「あやまらないでくださいよ」

 コヨミちゃんは笑った。

 無理をしているように見える。

「だったら先輩、その人にフられたら私にも、まだチャンスありますか?」

「いや何言ってんの」

「冗談です」

 コヨミちゃんはいつものような口調に戻った。
 だけど、やっぱり語尾は震えている。

 無理をしてる。

 でも、たぶんそれは、自分を守るために無理をしている、のだと思う。
 だから、俺がそれについて何か言う資格は、今はない。きっと。
 
「なら先輩、私は先輩のこと諦めますから、先輩もその人にしっかり告白してくださいね!」
 
「え、いや、なんで」

 俺の方が戸惑っている。
 コヨミちゃんは、俺が思っていたより、強かったのかもしれない。

 強がっているだけ、かもしれない。

「もし先輩がその人と付き合えたら、私は背中を押せた、ってことで先輩の記憶に残ることができます。
 せっかくフられたんですから、せめていい思い出として残りたいです」

 コヨミちゃんは早口にそう言った。

「いや、俺が告白してもフられる可能性はあるわけで……」

「先輩ならだいじょぶです、私が……惚れたんですから」

 コヨミちゃんはそう言って笑うと、勢いよく立ち上がった。

 まだ花火は上がり続けている。



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