305:名無しNIPPER[saga]
2016/08/28(日) 23:40:32.05 ID:ilA7zgD60
でも、夕陽のせいか、イチの耳が、少し赤く染まって見える。
少し見えるその顔も、夕陽のせいで赤みを帯びている。
それを見て、また、
しつこいようだけど、また俺の心臓は激しく鼓動を打つ。
もう全身が動脈。体のどこかに、静かに血が流れる血管があるなんて嘘だ。
今の俺は、全身の血管が、全力で脈打っている。
「おれさ、イチのことが、」
口を閉じる、開ける、閉じる。また開ける。閉じる。
緊張して言葉が続かない。
息を吸う。満足に呼吸できない。
急に酸素が薄くなった。公園から、空気がなくなったような錯覚を覚える。
でももう言葉は出来てる。
完璧じゃない。保険もかけてない。そもそも保険のかけようがない。
諸刃の剣。 剣でもない。
でも言わないと、ここで止めてしまうと、たぶん、あとかたもなく後悔する。
「好き、」
喉に息がつまる。
「……だ」
……すごく、アホくさくなってしまった。
でも、言ってしまった、と頭で理解すると、
風が止む。音が止む。少し耳鳴り。
時間が止まる。
隣でイチが息を呑むのが聞こえる。
……あれ、時間止まってないや。
だったら、おれは、本当に言ってしまった、ってことで、
なら、最後まで、
「付き合って……ください」
言い切るしかない。
かたちはどうあれ。
伝わればいい。
俺から動くことができればそれでいいんだ。
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