316: ◆1HYehGkP635v[saga]
2016/08/29(月) 01:03:18.45 ID:hWTEXAWe0
悩む必要がなくなったから、こなたは姿を見せなくなったのだろう。
俺が、変わることを恐れなくなったから。
あいつ自身もいなくなる、という変化も、俺は素直に受け止めることができた。
まあそれはそれとして。
その日は、たしか、週末明けの、月曜日の放課後だった。
一昨日と昨日は、いろいろと用事があって、イチと会っていない。
学校に来ても、文系と理系が違うとなかなか会うことはない。
昼休みも、イケメン君とユウキに付き合わされて、会いに行く暇はなかった。
ということで、しばらく顔を見ていなかったその日。
少し急ぎ足で、俺は部室に向かった。
連絡をしたわけではないから、どこにいるのかはわからなかったけど、きっと、この時間、イチなら、きっと。
生徒会室の前を通って、長い廊下を歩く。
秋の初めの廊下は少し冷えていて、洗練された空気が漂っていた。
大きく息を吸うと、肺の中が洗われるような気分になる。
窓の外は、夏の間木陰を作っていた植木たちが、役割を終えたかのように葉を茶色く染めて、その枝を大きく揺らしていた。
校舎の端っこの、小さな教室に近づく。
今日も今日とて、俺は相も変わらず、この扉を開く。
その奥からはあたたかい気配がして、誰かいる、ということが伝わってくる。
今、会いたい人。
扉を開けて、俺は言う。
ーーやっぱり。
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