過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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66:名無しNIPPER
2016/08/19(金) 13:55:49.12 ID:F+nlZ94w0

 ナナコがあっ、と声をあげる。
 ふふふ、とチヨの静かな笑い声が聞こえてきた。

 盤面を覗き込むと、角は白なのだが、それ以外の周りはすべてチヨの黒で埋め尽くされていた。

「やりますね……」

「オセロは、妹たちといつもしてるからね」

 チヨがいつになく得意げだった。ナナコは顎に手を当て次の手を考えている。が、どう見ても詰みだった。

 チヨ、オセロ好きだったんだ。

 窓の外を見ると、空は雲で覆い尽くされていた。空が青いのって気のせいだったかな、と思ってしまうほどの白。
 オセロ盤とは大違いだ。

 どこからか吹奏楽の演奏の音が聞こえてきた。耳を傾けてみるが、なんの曲かはわからなかった。

 プレクトラムアンサンブルは曲なのかどうかすらわからなかった。

 ふと、話し声が聞こえてきて、振り返る。
 入り口には部長とイチが立っていて、ちょうど部長が半開きの扉を開けようとしているところだった。

 ガタン、と音を立てて扉が開かれて、オセロの石(石? ……なんて呼ぶんだろう)がカタカタと揺れる。

「おはよう!」

「やは」

「もう昼ですよ」

 カバンを肩にかけ、元気よく挨拶をした部長と、いつも通りの、気の抜けた挨拶をしたイチ。
 部長は基本寄り道をしてくるので、部室に来るのは、大体最後。

 我が部は自由が売りだ(売ってないけど)。


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