過去ログ - アンパンマン「ばいきんまんはもういない」
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17:オータ ◆aTPuZgTcsQ[sage]
2016/08/23(火) 15:32:43.33 ID:Yu37ZZYbO
その後、パン工場に戻ったぼくは、再び笑えるようになるまで、一日だけお休みをもらった。
今日はドキンちゃんも泊まるらしいけど、ぼくはもうドキンちゃんとは言葉を交わさなかった。
貰った休みを全て使って、ぼくは一日中ベッドに横たわる。
時間は思ったより速く進み、頭が真っ白なまま、次の日を迎えた。

次の朝には、ドキンちゃんはすでに、ばいきんまんが建てた森の小屋の方に向かったらしく、パン工場にはいなかった。
ぼくも一日の内に落ち着いていて、メロンパンナちゃんが呼びに来ても、普通に振る舞えたと思う。
あまりにも落ち着きすぎていて、まるでなにもなかったかのようだった。

けれど、ぼくは助けを呼ぶ声が聞こえなくなっていた。
やっぱりぼくは、もうヒーローではなくなったのだろう。
あの瞬間に、彼を助けることを諦めたぼくが、人を助けようとするなんて、おかしい。
ぼくはもう、誰かを助けることはできない。

生きている理由さえ、ぼくは失ってしまった。


「アンパンマ〜ン」


自分の部屋でそんなことを考えているとき、扉の外からぼくを呼ぶ声がした。
聞きなれた声はいつものように不思議な声色で、ぼくの名前を繰り返す。


「アンパンマン、いないんですか?ホラ〜」

「待って、今開けるから」


扉を開いてみると、そこにはやっぱりホラーマンが立っていた。
彼はいつも通りの様子で、驚いたような顔をする。


「アンパンマン、ずっと起きてたんですか?」

「ああ、うん」

「でも助かりましたよ。こんな朝早くに来たかいがあったんですね〜」


そう言われて、今がまだ夜と朝の中間だったことに気がつき、ぼくは今さら驚いた。


「どうしたの?なにか困ったことがあった?」

「困ったことがあったのはアンパンマンの方でしょうに。
大変でしたね、ばいきんまんのこと」


ぼくは言葉につまって、なにも答えられなかった。
けれどおかまないなしに、ホラーマンは話を続けた。


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