過去ログ - アンパンマン「ばいきんまんはもういない」
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3:オータ ◆aTPuZgTcsQ[sage]
2016/08/23(火) 15:13:06.61 ID:Yu37ZZYbO
「アンパンマン」


ぼくの部屋の扉がノックされたので、ぼくは音のする方へ歩いていった。
ドアを開けると、心配そうなメロンパンナちゃんが、ぼくの顔をのぞきこむ。


「ねぇ、アンパンマン……。今日もパトロールお休みする?」

「ううん、寝て起きたらスッキリしたんだ。
ぼくはもう大丈夫」

「そう……?」


あまり信じていないような笑顔で、メロンパンナちゃんは笑う。
ぼくもきっと似たような顔で笑った。


「そうだ!私も一緒についていこうか?」

「ううん、ぼく一人で大丈夫だよ」

「アンパンマン……」


まだ心配そうな顔をするメロンパンナちゃんの頭を撫でて、ぼくは部屋の外に出た。
昨日は部屋に閉じ籠りっきりだったから、一日ぶりのパン工場だ。
様子は普段と変わっているわけもなくて、ぼくは一瞬だけ期待してしまう。
なにもかも、一昨日までの日常と、変わりないんじゃないかと。


「アンパンマン……無理はしないでね?」


後ろからメロンパンナちゃんに声をかけられて、ぼくは、はっと目が覚める。
なにも奇跡のようなことは起きていないと、メロンパンナちゃんの顔から十分に読み取れてしまう。

もう、この世界に彼はいない。


「大丈夫だよ、ありがとね」


ぼくはもう一度笑って、パン工場の階段へと歩き出した。
一段一段下っていく足は、本当にぼくの足だろうか。
なぜかそんなことを考えた。


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