過去ログ - アンパンマン「ばいきんまんはもういない」
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:
オータ
◆aTPuZgTcsQ
[sage]
2016/08/23(火) 16:59:08.02 ID:Yu37ZZYbO
「そんな……ぼくのことが大好きだったなんて……」
「信じられませんか?パン工場のみんなの姿を見ても、分からないのですか?
悲しんでいたり、怒っていたりしたのは、なせだか本当に分からないんですか?」
「ぼくは……」
「ジャムおじさんの涙は、嘘だったと思ってるんですか?」
ぼくはその言葉に凍りついた。
しょくぱんまんが怒ったのも、カレーパンマンが怒ったのも、メロンパンナちゃんが泣いたのも、僕を愛していたからだとしたら。
バタコさんもクリームパンダちゃんもチーズも、なにも喋らなかったのは、僕を愛していたからだとしたら。
ジャムおじさんが泣き崩れたのは、僕を愛していたからだとしたら。
「……ぼくはなんてことをしてしまったんだろう」
ロールパンナちゃんの、無責任という声が頭の中に響いた。
ぼくはやっと取り返しのつかないことをしたと分かり、ぼんやりと立ち尽くした。
犠牲なっていい命なんて、一つも無かったんだ。
「アンパンマン、あなたはあの島のこどもたちを助けました。
だから、もう一度だけチャンスをあげましょう」
ホラーマンみたいな人はぼくを見て、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「あなたは、もしやり直せるとしたら、どうしたいですか?」
ぼくは迷わず、彼に告げた。
「ぼくは絶対ばいきんまんを助けたい……。
でも、ぼくも絶対死にたくない」
彼は微笑んでぼくの頭を撫でた。
「それが正解ですよ。アンパンマン」
すると、いつの間にか彼が手にしていた本が光だした。
その光は暖かくて、ぼくはだんだんと眠くなってしまう。
遠のいていく意識のなかで、優しそうな声が響いていた。
「これで理の歪みは直りました。
あなたとあの島以外の、全ての時間は戻ります。
あなたがもう理から外れないように、私は祈ってますよ」
ぼくは、その声を聞いたのを最後に、意識を手放した。
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