過去ログ - アンパンマン「ばいきんまんはもういない」
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オータ
◆aTPuZgTcsQ
[sage]
2016/08/23(火) 17:14:47.54 ID:Yu37ZZYbO
はっと顔をあげると、ジャムおじさんが優しく微笑んでいた。
バタコさんも隣で、穏やかに笑っている。
「ごめんなさい、あなたがそんなに思い悩んでいたなんて、思わなかった。
私たちはもうずっと、ちゃんと思いを伝えてなかったかもしれないわね」
「そんな……ぼくが悪いんです。ぼくが誰のことも信用せず、自分も信用しなかったから……」
「良いとか悪いとかじゃないんだよ。私たちはお互いに、本音を言い合うべきだったんだ。
私たちは家族なのだから」
ジャムおじさんは、神様のように微笑んで、ぼくの手を握った。
「私はお前のことを愛してるよ。アンパンマン」
手が塞がったぼくは、ぬぐうことも出来ないまま、ぼろぼろと涙をこぼした。
けれど、ぼくはぬぐいたいとも思わなかった。
この涙は生まれてきてから今までで、一番幸せな嬉し涙だから。
さらに、ジャムおじさんとぼくの手の上に、バタコさんの手も重なった。
「私もよ、アンパンマン。私たちのところを選んで産まれてきてくれてありがとう。
あなたのこと、愛してるわ」
ぼくは今見てるものが夢なんじゃないだろうかと思った。
本当は全て夢で、明日になれば重苦しい気分で目覚めるぼくがいるのかもしれない。
そのぼくは勝手に周りを信用しないで、勝手にひねくれていたぼくだ。
そして、自分がひねくれているということまで、気づかないように目をそらし続けてきていた、自分なんだろう。
ぼくは怖い。
全てが泡のように消えてしまい、空っぽな心で生き続ける毎日が。
「アンパンマン、つらいのかい?」
「はい……これが全て夢だったら……ぼくは……」
すると、ぼくの声を聞いて表情を変えたクリームパンダちゃんが、ぼくの手の上に自分の手を重ねた。
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