393:名無しNIPPER[saga]
2016/12/25(日) 22:38:43.51 ID:WZRWBcW7o
「…………えへへ」
「……ほら、蘭子。もうちょっとだけしっかり」
「あっ、うん…………えへへっ……」
蘭子は放っておくと緩み出す顔を必死で引き締めていた。
小声で囁く彼の顔も、口調とは裏腹に柔らかい笑みを浮かべている。
今宵の蘭子はひときわ美しかった。
漆黒のドレスに身を包み、所々には赤薔薇のコサージュがあしらわれている。
その色に口を挟む者は居ない。
蘭子は白銀の、紫紺の、深紅の、群青の、新緑の。
――そして何より、漆黒の似合う女性へと育っていた。
「……」
新郎の隣に蘭子が座り、そして蘭子の隣にはグリフォンが座っていた。
入念に整えた毛並みへ結んだのは深紅の蝶ネクタイ。
テーブルの上に行儀良く、静かに香箱座りをしている。
その姿に口を挟む者は居ない。
彼の眼差しは実直さにあふれ、何より彼は蘭子を守る騎士なのだから。
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