9:名無しNIPPER[saga]
2016/09/04(日) 18:19:17.79 ID:UKdWgJlR0
「誰かと思えば島田流の娘じゃないか」
「あぁ〜! トマトとオリーブオイルとアンチョビとチーズが苦手な!」
「島田愛里寿さんです」
アンツィオ高校の皆さんが手を振っても、舞台の愛里寿ちゃんはいつもの無表情を貫いている。
それが、私を不安にさせる。
おかしい。
私は自分の呼吸が早くなっていくのを感じながら、その場を動けないでいた。
「愛里寿、早急ですまないが用件を聞かせてくれないか。我々も突然こんな所に集められて困惑している」
お姉ちゃんが起立して愛里寿ちゃんに言う。
「……」
「どうしたんだ? どこか具合でも──」
瞬間、愛里寿ちゃんの瞳が大きく見開かれた。
「お姉ちゃんッ!!」
無意識の内に、私は声を上げていた。
直後、愛里寿ちゃんが撃ち出された砲弾の様な速度でお姉ちゃんへと突っ込んだ。
「くッ!?」
お姉ちゃんは全身で左に飛び込む。直後、鉄の拉(ひしゃ)げる音が会場に轟いた。
見ると、先ほどまでお姉ちゃんが座っていた椅子は見る影もなく潰れ、鉄屑へと変貌していた。
在り得ない事だった。
信じられない。
信じられない、けど。
目の前にいるこの子は、愛里寿ちゃんなんかじゃ、ない。
「逃げろぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
お姉ちゃんの叫び声が会場に響き渡る。
その声に叱咤されて、ようやく私達は立ち上がることが出来た。
その場の全員が我先にと近くの出入り口へ向かって走り出す。
しかし。
ズンッ!と私の体に何かが駆け巡った。
一体何が、と思っている内に、いつの間にか私の体は地面に倒れ込んでいた。
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