過去ログ - 澪「シンクロナイズドドリーミング」
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45:名無しNIPPER[sage saga]
2016/09/09(金) 17:09:35.00 ID:ROM1DOs8o



黒唯「それで? 諦めるの?」

澪「・・・わからない。諦めたくはないけど・・・」

黒唯「諦めたくはないけど、前に進むことにも納得できない、か」

澪「・・・今まで考えたこともなかったんだ。自分が幸せになることが、誰かの幸せを奪うことに繋がるなんて」

黒唯「・・・りっちゃんの件と同じだと私は思うけどなあ」

澪「同じじゃないよ。私と律の関係なら、壊さないように私が頑張ればいい。でも唯と憂ちゃんの関係なら、部外者の私は一方的に壊す側だ」


正確には、私に限らず誰もが壊す側にしかなれないと思う。
それくらいあの姉妹の仲の良さは二人だけで完結していて、完成されている。姉妹なんだから当然だよな。
でも、その『当然』を私は壊し、引き裂かなくてはならないんだ。自分の幸せなんていう自分勝手な想いのために。

いずれまた律と喧嘩したなら、いくらでも頭を下げるだろう。
でも憂ちゃんに対しては、いくら頭を下げても足りないだろう。

そう思ってしまったから、これ以上踏み出せる気がしない。人を傷つける事に納得できない。黒唯の言う通りだ。


黒唯「・・・諦めるなら、唯にちゃんと伝えないとね。さんざん気がある振る舞いをしてきたのは澪ちゃんなんだから」

澪「諦めるとは言って――」

黒唯「わかってるよ。でも進めもしないんでしょ? どうするの? とりあえず一人で悩んでみる? 無駄だと思うよ」

澪「・・・いつになく当たりが強いな」

黒唯「・・・澪ちゃんを助けるのが私の仕事だよ。そんな私は、これはりっちゃんの件と同じだと思ってる」

澪「・・・同じじゃ、ないよ」

黒唯「そう、最初の認識の時点でこうしてすれ違っちゃってる。だったら私は、澪ちゃんのために澪ちゃんに強く当たることしかできない」

澪「・・・」

黒唯「私は澪ちゃんでもあるんだからわかるよ。このまま一人で抱え込んでても答えは出ない。そして、私の言葉じゃ澪ちゃんに答えをあげられない」

澪「・・・だから諦めろと?」

黒唯「・・・私がそんなこと言うと思う?」

澪「だってさっき――」


黒唯の表情を見たら、それ以上の言葉は出てこなかった。
黒唯は、哀しそうな顔をしていた。

落ち着け私。今はまだ諦める気はない、それは彼女もわかってくれている。そもそも彼女の立場上、諦める事を推奨するはずもない。
冷静になれ、私。彼女が信頼の置ける人だと判断したのは私じゃないか。
冷静になれ。彼女の言動から、真意を導き出せ。
諦めろと言っているわけではない。一人で悩む事を勧めていない。でも彼女自身も答えをあげられない。となると・・・


澪「・・・唯に話せ、と?」


「唯に伝えないと」という言葉がヒントだったのではないか、と考えた。
考えて、私が導き出した答えに、黒唯は微笑みだけで応え、否定も肯定もしない。
でも肯定だろうと思う。他に答えは出てこない。なのに肯定しないという事は・・・私に悩めと言っているのだろうか?
一人で悩んでも無駄だと言われた。だから唯に話す。しかし、何をどう、いつ話すかという全てが・・・私に委ねられているのか? 私が全て自分で決めるのか?
確かに彼女は今までだって私を導くというよりは私の背を押す存在だったけど・・・それをありがたく思った私もいたけど・・・
なのに、いざ全てを丸投げされると不安でしょうがない。


黒唯「大丈夫だよ、澪ちゃん。最近の澪ちゃんはしっかりしてる。自信を持っていいよ」

澪「そう言われても・・・」

黒唯「頑張ってね。いい報告を待ってるから」

澪「・・・えっ? あれっ?」


その言葉を最後に、黒唯の姿が消えた。
夢の世界から、部室の中から姿が消えた。
そして、次の日から――唯に言葉を告げるその日まで、私がこの世界に呼ばれる事はなかった。



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