825: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/02/24(金) 03:51:34.66 ID:cxOA07xE0
探索組にしては珍しく、後手を踏んだ形となっていた。警戒を怠っていた訳ではない、緩みがあった訳でもない。ましてや人数上の不利は承知の上で挑んでいる。そう、ただ単に想定を上回る事態が起きたというだけに過ぎない。
きっかけはスプレーゾンビに強化されたと思われるゾンビの襲撃、安全を取るために後退しようとした、それが仇となった。後退時にコールゾンビがいることに気づかず、鳴かれる前に処理が出来なかった。処理がある程度進んだ段階ならよかったが、開始間もないこともあって、その効果はてきめんだった。
徐々に包囲が狭まっていくのが探索組はわかる。司令塔である山中も、処理をこなしながら打開策を練るという高度な思考を要求され、思うように指示が出せない。補佐役の井門もいないこともあり、各々が独自に判断するというメンバーの力量任せの状態。幸か不幸か、メンバーが各班にわかれてはおらず、全員で固まっている。全員の安全は確認できるが、それでも一点集中でゾンビが集まる状況は良いとは言えない。
「(退路を開けるにしても、全体的に来てますね)」
強化されたゾンビは、もうそろそろ在庫切れになりそうなものの、集まってきている通常のゾンビがうようよと寄ってきている。どこかの建物に逃げるか、それともこのまま総力戦に打って出るか、数秒での決断を山中が求められた時だった。
機械の駆動音、それもどこか威圧的な響く音。
ゾンビも、そして山中達もその音の方に目をやる。そこにはいつもの薄汚れたコートを着て、銀色の右腕に握られたチェーンソーをわざと鳴らすハンターの姿があった。
「おいおい、何やら楽しそうなことしてるじゃねぇの。混ぜてくれよ」
隙を察した錬浄と佐原が、一気に退路の方に群がるゾンビに突撃した。間を置いて意図を理解したメンバーも、それに続く。これで、ハンターに向かうゾンビと、探索組に向かうゾンビに分かれた。
「安心しろよ、俺は付き合いがいいんだ。逃げやしねぇよ」
もう一度チェーンソーを激しく駆動させ、ゾンビの群れの中に彼は突っ込んでいった。
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