過去ログ - 【モバマスSS】祝福についての一考察【佐久間まゆ】
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6: ◆BSXvNghmP1ho[saga]
2016/09/16(金) 21:39:13.17 ID:/Mxv7rGl0
「どうだった?」

明かりをつけ、スクリーンを仕舞いながらプロデューサーさんが聞きました。まゆは紅茶を淹れる準備をしています。

「そうですねぇ・・・。主人公がプロデューサーさんに似ていましたね」
以下略



7: ◆BSXvNghmP1ho[saga]
2016/09/16(金) 21:39:52.71 ID:/Mxv7rGl0
茶葉がお湯の中で開いて、かぐわしい香りが広がりました。まゆが二人分のカップを持ってソファに座るのを見ると、プロデューサーさんは話し始めました。

「テーマについては、よくわからない。タイトル通り郷愁(ノスタルジー)についての話だと見る人も居るだろうし、人間の抱える孤独と苦痛についてとも、詩作すること・何かを創ろうとすることについての話とも取れる。あるいは信仰についての話なのかもしれない。それについてはよくわからない。しかし・・・」

プロデューサーさんはソファに座って紅茶を一口飲むと、喫茶店でいつもそうするように煙草の箱を取り出しました。それからすぐ隣にまゆがいるのを思いだして、ポケットの中へ仕舞いました。
以下略



8: ◆BSXvNghmP1ho[saga]
2016/09/16(金) 21:40:26.37 ID:/Mxv7rGl0
「しかし、この退屈な映画が人の心を捉えて離さない理由ならわかる。祝福だよ。この作品には祝福が実現されている」
「祝福?一体どこに? あの人達は最後まで救われなかったのに」
「そう、登場人物が救われることはない。物語では最後まで奇跡なんて起こらない。特別な喜びや、感動が待っているわけでもない。それでもこの映画は美しいだろう? 祝福とは、『何か尊いものに触れている』ということだ。『ただその瞬間がそうあるだけで素晴らしい』ということだ。彼は徹底した計算のもとに画を作り上げ、スクリーンの上に祝福を実現したんだ」

映画のシーンをいくつか思い返してみました。


9: ◆BSXvNghmP1ho[saga]
2016/09/16(金) 21:41:11.19 ID:/Mxv7rGl0
「退屈なシーンはいくつもあっただろうけど、陳腐な画なんて一度でもあっただろうか?」

そこに救いがなかったとしても、映像の美しさによってシーンの一つ一つが聖化され、彼らの抱く苦しみや痛みが、尊く愛しいもののように感じられました。
確かに、それは祝福と呼ぶべきものなのかもしれません。

以下略



10: ◆BSXvNghmP1ho[saga]
2016/09/16(金) 21:42:05.21 ID:/Mxv7rGl0
外はもう暗くなっていました。街の喧騒が微かに聞こえます。窓の向こうの街の明かりがぼやけて綺麗でした。
ふと、まゆの愛も祝福のようなものなのかもしれない、と思いました。

「プロデューサーさん」
「んー?」
以下略



11: ◆BSXvNghmP1ho[saga]
2016/09/16(金) 21:42:42.42 ID:/Mxv7rGl0
「どうして彼は祝福を実現できたのでしょう? 彼の中の一体何が、それを可能にしたんでしょうか」
「どうだろう・・・。天才の考えることはわからないよ」

ただプロデューサーさんがここにいるだけで、この瞬間を美しく感じられます。この慕情が報われることなど最後までなかったとしても。


12: ◆BSXvNghmP1ho[saga]
2016/09/16(金) 21:43:10.38 ID:/Mxv7rGl0
「でもきっと、彼は祈っていたと思う。『どうか祝福よ在れかし』と。彼は苦悩しながら作品を作ったことだろう」
「・・・そうかもしれませんね」
「その苦悩が癒やされたかどうかはわからない。それでも祈りは叶った。祝福は実現した」

まゆも精一杯祈ります。どうかこの愛に祝福がありますように。
以下略



13:名無しNIPPER[sage]
2016/09/17(土) 12:21:24.41 ID:QLW89v86o

まゆのもっと詳しい考察も聞きたかった


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