過去ログ - 新田美波「上書く口付け」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2016/09/17(土) 21:37:54.54 ID:CHRKUnfE0
「ん、ふふ……」


 食んで、噛んで、味わって。そうして繋がっていたプロデューサーさんの先がこつこつ、と。唇の奥の私の歯へと触れ、それが何度か繰り返されて、それを感じていた私はその何度目かで堪らなくなって。……だからやがて、いつも通り、その先へ進んでいく。

 小さくだけ開かせていた口を大きく開けて。歯も、舌も、喉の奥さえ光に触れてしまうほど開け放って、そしてそれから進む。

 先へ、自分の顔を先へ。奥へ、プロデューサーさんのそこを奥へ。落として、迎え入れて……吐息が熱くなるほど興奮に焼けた口の中へ、愛しいプロデューサーさんを咥えこむ。

 止めどなく溢れ、けれど同時に粘っこく糸まで引くような濃くて多い私の涎で包み込む。溶かすように。溺れさせるように。蕩けてしまうように。

 そしてそれを舌で運んで塗り付けて。絡めて擦り付け、動かし跳ねさせて。自分をそこへ刻み付けるように、夢中で、贈り届ける。

 愛しい味を感じながら――汚いだなんて思わない。他の人のものならたとえどんな誰でも抵抗しか抱かないし抱けないことだけど、でもプロデューサーさんなら思わない。むしろ求めて、欲して、望んでやまないくらい。そんな愛しいその味を感じながら、どうしようもない高揚が胸の内へ湧いてくるのを自覚する。

 大好きなプロデューサーさん。他の人にも優しくて、誰にも好かれて、私のものにはなってくれないプロデューサーさん。

 でも、今は私のもの。

 この時だけは。他の人のために尽くされたプロデューサーさんを私で上書くこの時だけは。他の誰も、他の何も、二人以外は入り込まないこの秘めた時の間だけは、プロデューサーさんは、私のもの。

 いつかの私が想いにはち切れそうだったとき。期待や責任、夢や現実、愛しい好意や愛しむがゆえの嫉妬に、はち切れてしまいそうだったとき。そのとき、プロデューサーさんが許してくれたこの時間。

 私の想いには応えてくれない。けれど私の想いを理解していて――そして、応えてくれるプロデューサーさんが、許してくれたこの時。

 どうしても私が堪えられなくなってしまいそうなときだけ。他の誰も居ない日のどんな何も入ってこられない仮眠室の中でだけ。他の人たちが出勤してくるまでの短い夜の間だけ。その上でだけ許してくれた、無防備に眠るプロデューサーさんとの、私の、愛を尽くす時間。

 何も知らない。何も分からないし、何も応えない。……けれど私を受け入れて、応えてくれる、眠りの中のプロデューサーさんと私の時間。

 夜、二人きりの、想いに満ちた逢瀬。


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