過去ログ - 花丸「今日も練習疲れたなあ…。」
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20:名無しNIPPER[saga]
2016/09/21(水) 02:09:16.03 ID:M3FiOxds0
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日曜日、昼前に目が覚めた。
たっぷり寝たはずなのに、怠さはとれていなかった。
一日おいて、余計に昨日の自分がわからなかった。
布団を頭から被る。
ぐぅと鳴ったお腹をさすり、あっさり布団から出る。
ふらふらと昼食をとり、部屋に戻る。
ぼうっと部屋を見渡すと、隅に何冊も積まれた本があった。
手に取ってみると、収まりのいい重さだった。
ほんのり紙の茶色い匂いが漂っている。
ぺらりとページをめくる。
今の気分には不釣り合いな、淡いときめきにも似た何かが胸に訪れる。
ぺらりとページをめくる。
視線は吸い付くように第一行へ。
ぺらり。ぺらり。
欠けていたピースがはまったかのようだった。
登場人物の台詞が、心情が、場の情景が、欠片だらけの頭の中に染み込んでいく。
ルビィの顔、善子の顔、果南の顔、ダイヤの顔、鞠莉の、千歌の、曜の、梨子の…
さまざまな光景が目の前の文字列を媒介に結びつき、整理されていく。
最近の自分は、びゅんびゅんと高速道路に乗って走っていたようだった。
景色は引き延ばされ、光は長く尾を引き、それでいて止まることも、周囲をゆっくり見ることもできていなかった。
ぺらりと、ページをめくる音だけが聞こえる。
慣れ親しんだ速度で、慣れ親しんだ景色で、慣れ親しんだ音と感触とともに時間が過ぎる。
自分の大事な一部が帰ってきたような、そんな気分だった。
花丸「やっぱり、マルは本を読んでないとだめみたい。1人で本を読んでいるのが、お似合いずら…。」
胸の奥で暗い炎が燃えていた。
善子の震えた声と、ルビィの必死な仕草がじゅくじゅくと傷を抉っていく。
開放感と充足感、他方で閉塞感、罪悪感。
雑多な想いを自分の中に感じながら、夕飯の時間まで本を読み続けた。
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