過去ログ - 【ガルパンSS】西住隊長は天才だから!凡人の気持ちなんてわかるわけがないですよ!
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6:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:24:50.19 ID:hsNhL/EX0
「えぇ、そう。あんたが何て言ってるか、ベソかきすぎて全然わからないけど、ようは後輩を探してほしいってことでしょ?」

逸見さんとぶつかった後、その場で倒れこんでいるわけにもいかず連れだってすぐそばのカフェに入った。
いや、茫然自失の私は手をにぎられ、引っ張って来られた、のほうが正しいかもしれない。

「そうよ。ついさっき、偶然会って今一緒なの。早く来なさい。近くのカフェにいるから。」

逸見さんはその間もずっとスマホで話を続けている。でも、おかげで無理に会話をする必要がないから、
私も居心地の悪さを感じずにここにいられているのかもしれない。

「もう!何をごにょごにょ言ってるのよ!今すぐ来る!いいわね!」

どうやら電話の相手は西住隊長らしい。時折、電話越しに漏れ聞こえる泣き声に、きりりと胸が痛む。

通話を終了し、ふぅ、と小さくため息。逸見さんの切れ長の目がすっと動き、私を正面にとらえた。

「…すみません。ご迷惑をおかけして。」

まっすぐに見つめられたその視線に耐え切れず、何とか口を開くが、上手く声が出ない。

逸見さんはいつもの表情、つまり怒ったような、あきれた顔を浮かべたが、何も言わずにメニューを差し出した。

困惑している私に、またふぅ、とため息をついて

「あれだけ走り回ったんだから、喉も乾くでしょ。おごったげるから何か頼みなさい。」

意外な言葉に驚いて顔を上げると、私の考えが顔に漏れてしまっていたのか、困ったような表情の逸見さんがいた。
その顔が、なんだか転んで泣きじゃくっている妹をあやすような、そんな表情に見えて。

タガが外れたように泣きじゃくってしまった。

   ***

「あの子がここに来た理由も知っているし、あなたの今の状況を見てなんとなく察しはつくけど、なにがあったのか教えてくれる?」

泣き止んだタイミングを見計らって掛けてくれた優しい言葉に、私は隊長就任からついさっき起こったことまで、全部話してしまった。

まとまりのない私の話を、相槌を打つだけで静かに聞いてくれた逸見さんは、私が話し終わったのを見ると、一呼吸おいて、ぼそっとこうつぶやいた。

「つらいわよね。」

また、意外な言葉。
会ったことは数えるほどしかなく、直接話したこともなかった私は、逸見さんは自分にも他人にも厳しい、冷たい人なのだと思っていた。

「また、意外だなって顔してるわよ。考えが顔に出すぎ。」

赤面して下を向くが、その通りのことを思っていたのだから仕様がない。
でも、苦笑交じりの言葉は、口調こそ強いが、そこに含まれる優しさが感じられた。

「私が何年、あの天才たちと付き合ってきたと思ってるのよ。その気持ちは分かりすぎるほどよくわかるわ。」

軽い口調で告げられたその重い言葉に、やっと私は思い至る。彼女がこれまで進んできた道に。

名門黒森峰女学園で、1年生時は西住隊長とチームメイトとしてともに歩み、彼女が黒森峰を去ってからは
西住まほさんと一緒に、大洗女子学園と激戦を繰り広げた。副隊長、隊長と歴任し、高校卒業後は大学で、また西住隊長とチームメイトとして頑張っている。

「あなたは上に越えられない壁があるだけだけど、私は横も上も壁で囲まれているのよ。逃げ道なんてどこにもなかったわよ。」

そうだ。私以上に過酷な環境に居て、何度も西住隊長に負けて。
なのになぜ、この人は西住隊長と同じ大学に進もうと思ったのだろう。いや、それ以前に逸見さんは

「なぜ、戦車道を続けようと思えたんですか?」

何度も圧倒的な才能を見せつけられて、何度も敗れて。その歩んできた道は決して楽なものではなかっただろう。


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