過去ログ - 【ガルパンSS】西住隊長は天才だから!凡人の気持ちなんてわかるわけがないですよ!
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7:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:32:19.53 ID:hsNhL/EX0
鼻の奥がツンとして、瞬間、去年の全国戦車道大会決勝戦を思いだす。
決勝の相手は私が一年生の時と同じく黒森峰女学園で、隊長は逸見さんだった。

練度高く、乱れのない進軍で前半は大洗女子学園が圧倒されたが、西住隊長の機転で形勢が逆転。
しかし、そこから逸見さんはあきらめずに反撃に転じ、最後は双方フラッグ車のみを残しての壮絶な一騎打ち。
正直どちらのチームが勝っても不思議ではない試合だった。

だから、あの決着の瞬間の、モニタ越しに見た逸見さんの表情は、どんなだっただろう。なんて、そんなことをふいに考えてしまった。

「戦車道が好きだから。」

「え?」

そうやって、考え込んでいたから、一瞬反応が遅れてしまった。

「自分で質問しておいて、ボーっとしちゃって。そんなところまで同じなのは、大洗の伝統なのかしらね。」

苦笑してそうつぶやいた逸見さんは、スッと姿勢を正して私にまっすぐ向き合うと

「戦車道が、好きだからよ。」

そう、もう一度、私の質問に答えてくれた。

「好き、だから?それだけですか?」

もっと、自分を高めるためだとか、自分の能力を証明するためだとか、そんな回答を予想していた私はまた意表を突かれてしまった。

「納得してないって感じね。でも、私もあなたと同じように長いことぐるぐる悩んで、出た結論がそうだったんだから。私もどうしようもないわね。」

肩をすくめて答える逸見さんの、でもその表情は穏やかで、強い意志がそのまなざしからは感じられた。

「戦車道なんて熱いし寒いし、体はいつも火薬とオイルまみれだし。歯を食いしばって頑張っても結果はついてきてくれないし。
何度もやめようと思ったけど、でもやめられなかった。やめたくなかった。」

そう話す彼女の表情は、言葉とは裏腹に本当に楽しそうで。

「車長をやっていると、戦車がまるで自分の体のように動く瞬間がない?戦場の隅々にまで自分の神経がつながってるって感じたときは?
自分の体はそこにあるのに、他のチームメンバーの意思もはっきり感じられて。あの感覚を味わってしまったら、もう辞めるなんてできないわ。
あなたも、そうなんじゃないの?」

いたずらな顔でそう、問いかけられた。

「みほに付き合わされて、何度も大洗の試合を見に行ったけど、試合中のあなた、自分が思っているよりもずっとイキイキとしているわよ。
怖がって、あせっているけど次に何が起こるのか楽しみにしている。まるでお化け屋敷に入った子供みたい。」

問いかけられて。私は改めて考える。なぜ自分は今も戦車道を続けているのだろう。隊長を継いだ義務感だけだった?
本当に戦車道はつらいことだけだった?試合中に思わず握った手に、にじむ汗は緊張のためだけ?

「わ、私は…。」

ぐるぐると、考えがまとまらない頭で何とか答えようと努力する。でも、その悩みはさっきまでよりもつらくなく、何かがもう少しでつかめるような、
あとは言葉にできればいいような、そんな。

「遅いわよ。」

そう言った逸見さんの視線は私ではなく、私の後ろに向けられていた。

「後は、二人でちゃんと話しなさい。同じようなしかめ面しちゃって。」

そう笑って、立ち上がる逸見さん。私は後ろを振り返る。
そこには目を真っ赤にした西住隊長がいた。

   ***



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