9:名無しNIPPER[sage]
2016/10/19(水) 01:24:36.95 ID:QB1AagmFO
テーブルの上には真姫の母親が淹れてくれた紅茶が置かれている。
薄赤く透明な液体の表面から、湯気が細くゆっくり立ち上って消える。
内側に薄青く小さな花がいくつか描かれた白いカップに、縁に金の装飾のあるソーサー。
海未は若干おぼつかない手取りでカップを口元へ運び、一口含む。
ほのかな苦みと香りが口の中いっぱいに広がって、思わず息を呑んだ。
紅茶を普段口にすることの少ない海未でも、この紅茶は上質なものだとわかる。
テーブルを挟んで向かいにいる真姫は、カップの取っ手を添えるようにしてつまんで持ち、少し口にしてゆっくり下ろす。
さっきピアノを弾く様子を見たからだろうか、振る舞い一つからも育ちの良さのようなものが自然と感じられる。
あるいはこの家の雰囲気のせいだろうか。
どちらにせよ、今日の真姫は、学校で見る真姫とは少しだけ違って見えた。
改めて部屋を見回してみると、あらゆるもの、空気が自分の家のそれとはまったく異なっていて、驚きと新鮮さを感じる。
「もっと楽にしていいのよ」
自然とかたくなってしまっていたようだ。真姫はそう言うが、やはりどこか落ち着かない。
28Res/15.84 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。