過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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◆XkFHc6ejAk
[saga]
2016/11/16(水) 15:21:55.24 ID:AFd/Hqam0
その次の夜、老人は酒場で酒を飲んでいました。
一人ちびちびと飲んでいた所、突如乱暴にドアが開かれました。そこには男が立っています。
「ジジイ、表に出ろ」
「ほぇ?」
「――いいから表に出ろや」
「……ヒヒッ!!」
男の只ならぬ様子を見て、老人は思わず感情が高ぶりました。
案内されたのは広い平地です。此処なら暴れても問題なさそうです。
「どうしたんじゃあ? 随分ぷりぷりしておるのぉ」
「俺は、あんたを超えてやる」
「おぉ? また博打でボロ負けしたのか?」
「行くぜ!!」
老人の言葉を遮り、男は最初からジャバウォックの姿に戻ると、炎を纏って大砲のような体当たりをしかけました。
しかし、老人は顔色一つ変えずに魔力の大玉でそれを弾き返します。
「ガァ!!」
吹っ飛ばされている最中、地面に右手をついて体制を直した男は、空に向かって深紅の火球を打ち上げました。
なんじゃ、と見上げる隙だらけの老人に対し、さらに距離を詰めて右腕を振るいました。爆風を纏った鉤爪が老人に襲いかかります。
(爆風で物理攻撃の範囲を広げるか。ふむ、悪くないの)
老人はにまりと笑うと、結界でそれを防ぎました。ばちっと右腕に電撃が走ります。
(クソが!)
苛立った男は、さらに威力を上げた左腕でそれを破壊します。しかし、その爪が老人を捉える事はありませんでした。
ゆらゆらと、まるで宙を舞う揚羽蝶のように滑らかな動きで、男が振り回す腕をすり抜けていきます。
(まだ人間体のくせに……的が小さい分当て辛いか)
「だったら――」
男は大きく息を吸うと、火属性の魔力を変化させてマグマのブレスを放ちました。
どうやら新技のようですね。粘性のあるどろりとしたマグマが辺りに飛び散ります。相手の足場を手っ取り早く奪おうという考えでしょうか。
回避した老人は宙に浮かぶと、指先から魔力の球を放ちます。凄まじい速度で男の身体に激突し、ポポポポポッと小さな連鎖爆発を起こしました。
「うむ、足場を奪うだけでも飛べない相手は苦しくなる」
「それに、マグマなら結界にしつこく絡みつく……考えたの、おぉ怖い」
(――よく言うぜ!!)
衝撃で身体がふらつきます。それでも男の目は全く死んでいません。
まだあんたのための必殺技を使ってねえんだぞ、と男は巨大な咆哮を挙げました。
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