過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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◆XkFHc6ejAk
[saga]
2016/11/16(水) 15:37:38.50 ID:AFd/Hqam0
「!」
辺りが眩く光ります。星の数ほどのウィルオウィスプ達が、一瞬で辺りの空間を覆い尽くしてしまいました。
そう言えば、彼はジャバウォックの姿でウィルオウィスプを使った事がありませんでしたね。
どうやら溢れる魔力に影響されているようで、それらの一つ一つが、通常の倍ほどの大きさです。勢いよくバチバチと爆ぜながら、高速回転を始めました。
風と共に無数の炎が荒れ狂います。その様はまるで炎の嵐。
これには老人も驚いたようで、強力なドーム状の結界を張ります。
しかし、その勢いに削りきられてしまいました。老人が炎に包まれます。
(どうせこの程度じゃ有効打にはならねぇだろ)
男が考えていた通り、老人は少し火傷を負った程度で、ぴんぴんしていました。辺りは焼け焦げた荒野となっています。
しかし、今度は無数の霊体の手が老人に絡みつきます。老人は何でもなさそうにそれを掻き消しました。
「だが、こいつはどうだ?」
老人が空を見上げると、夜空に星が浮かんでいます。
いえ、あれは男が最初に打ち上げた火球ですね。その正体は、マグマに高密度の魔力を練り込んだものです。
さらに、その中央には多数のウィルオウィスプを仕込んでいます。
それは打ち上げ花火のように飛び散り、天からの雷のごとく降り注いできました。
(ほう、これら全てが時間稼ぎだったのか。少し考えて戦うようになったな)
一つ一つに宿るウィルオウィスプが、老人に向けて落下の方向を調整しています。追尾流星群、と言った所でしょうか。
(その姿じゃ吸い込めねぇだろ、だが……変身の隙は与えねえぜ!)
ここぞとばかりに男はマグマのブレスを放ちます。老人は再び結界を張りますが、マグマに包まれてしまいました。
その結界の上に、全ての流星群が急降下して襲いかかります。
(その姿で戦えるほど、俺は弱くねぇんだよ!!)
「喰らいやがれ!! ジジイ!!」
――ビュオッ。
その突風のような音が鳴った瞬間、流星群が、マグマが、辺りの火が、全てが吸い込まれていきました。
「なっ……」
老人は「蠅の王」ベルゼブブの姿になっていました。満足そうにげっぷをします。
何故? あの状況でどうやって変貌した? 男は言葉を無くします。
「ヒッヒッヒ……惜しかったのぉ〜、結界を張りながら擬態を解くくらい、朝飯前なんじゃぁ〜」
「それに、擬態を解く時が最も大きな隙になると教えたじゃろお? ワシなら一瞬じゃぁ……ヒヒッ!」
嬉しそうな老人は、皮だけになった人間体をぶらぶらと振って笑います。
「……クソッ……!」
「だが、まぁ悪くなかったぞ? ワシに能力を使わせたんじゃからな」
「……それじゃ、足りねえんだよ!! 俺は!!」
「! 待て、……街から妙な」
老人はそう呟くと、猛スピードで飛んでいきました。
「あ? なんだってんだ……いや、あれは煙?」
男が街の方に目をやると、複数の箇所から煙が上がっていました。
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