過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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40: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/11/17(木) 14:41:24.41 ID:CbSsyhlG0
「おいおい、何だこりゃ」

街はまさしく地獄絵図でした。大量の人の死体が辺りに倒れこんでいて、血生臭い空気が漂っています。

所々が小規模の霧に包まれ、どうなっているのかよく見えません。まぁ……予想はつきますが。

男は街に着地すると、臭いを探り始めました。

「こりゃ、まるであの時の……」

「ひ、ひいっ……来るなあ! 来るっ……ぁ」

男が声の方にたどり着くと、若い男が見覚えのあるモンスターに叩き潰されていました。

特徴的な三つの首。以前男が戦ったキメラです。すでに何段階か進化を済ませているらしく、以前相手した個体よりも強そうな雰囲気を纏っています。

「あのガキ共の仕業か……?」

男は舌打ちをしました。鋭い牙が並んだ口元からオレンジ色の炎が溢れます。キメラは目が合えば敵だと言わんばかりに、男に飛びかかりました。

「悪いけどよ、今」

「機嫌が悪いんだわ」

――シュボッ!

がくりと黒焦げの獣の死体が地面に倒れ込みます。太陽のような豪炎が一瞬にして焼き尽くしてしまったのです。

(たかだかキメラ一体に、どれだけやられてんだよ……この街も脆いもんだ)

やはりジャバウォックの時と人間体の時では、瞬間火力が段違いです。男は朝食を済ませたかのように、死体には目もくれず飛び上がりました。


廃遊園地に勢いよく着地した男は、ウィルオウィスプを探索に向かわせました。

ですが、その必要はありませんでした。すでに黒フードの集団がやってきたからです。

「ミゼル」

「ああ、もう終わるんだ。何も考えなくていい」

黒フードの集団は頷くと、小さく何かを呟いて散って行きました。

今の口の動きは……「ありがとう」でしょうか?

「お前らは一体何がしてぇんだ!? この街を無駄に引っ掻き回しやがって!」

男は右足を地面に叩き付けて凄みます。びりびりと空気が揺れ、足を叩き付けた地面にヒビが入りました。

「その通り。俺達の目的は、この街を引っ掻き回す事だよ。無駄なんかじゃないさ」

ミゼルと呼ばれる男はそう言うと、ベンチに座り込みました。

「まぁ座れよ、どうせ皆死ぬんだ。穏やかに過ごそうじゃないか」

「嫌だね。それじゃあな」

ミゼルと呼ばれる男の話を聞くまでもなく、男は甲殻で覆われたしなやかな尾をぶんと振りぬきます。

「――本当は君も気付いてるだろ?」

その言葉に、尾がぴたりと止まります。風圧で枯れ葉が宙を舞いました。

「この街の最深部を見た者は、必ず死んでしまう……誰もが、この下に何かがいる事に薄々気付いているんだ」

「……」

「俺は呪術を習得しているうちに、この街に漂う負の気に気が付いた」

「だが、それは湧くたびに減っていっているんだよ。ゆっくりと下に吸われてるのさ」

「は?」

「考えてもみろ、そんな「何か」は、いつまでも眠り続けているだけだと思うか?」


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