過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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◆XkFHc6ejAk
[saga]
2016/11/17(木) 22:42:36.35 ID:CbSsyhlG0
中央街は壊滅状態でした。何しろ、イビルイーターが三体、さらにもう一体の化け物が殺し合いをしているのですから。
その争いに巻き込まれ、辺りは死屍累々となっております。運良く助かった一人は、膝を抱えて何やらぶつぶつと言っています。
その場に居ると、いずれ巻き込まれてしまいますよ? 夢ならばどれほど良いでしょうか。フフッ。
「何じゃ、ありゃ……どうなっておる?」
霧が邪魔でよく見えません。老人は上空から辺りの霧を全て吹き飛ばしてしまいました。
うめき声を上げる三体のイビルイーター達が、触手をぶんぶんと鞭のように振り回して暴れています。辺りはひどいものです。
イビルイーター達の触手を回避しているのは、キメラの「オリジナル」のようです。通常の三倍ほどのサイズで、獅子、ヤギ、ドラゴン、さらに狼の首を携えています。
やはり彼らはオリジナルを元に、呪術でその魂を複製しているようですね。男が倒したキメラも劣化個体だったと言う訳ですか。
それにしても、凄まじい成長スピードです。イビルイーター達もお互いを攻撃してはいますが、それでもあの触手が飛び交う空間を対処しているのは驚くべき事です。
身体を動かせば動かすほど、どんどん次の一歩が速くなっていきます。……おや、首元がメギメギと音を立てていますよ?
次の瞬間、新たな大蛇の首が形成され、一瞬で左の方に居たイビルイーターまで飛び出し、胴体の一部を齧りとってしまいました。
怯んだ隙を見逃さず、距離を詰めて残り四つの首が胴体を齧り取ります。
イビルイーターはびたんびたんと跳ね上がって抵抗しますが、筋肉で膨れ上がった右腕の一撃を受けておとなしくなりました。
(ありゃ……キメラが「霧の怪物」を……喰っとるのか?)
あいつらは同じ手駒では無いのか、と老人は興味深くその光景を眺めます。
キメラはがつがつとその肉を喰らっていましたが、突如風を切るようにその場から飛び上がりました。
もこりと地面が盛り上がり、複数の触手がビュッと飛び出してきます。地面の異変を感じ取ったようですね。
低い前傾姿勢を取ったキメラの全身が、筋肉でぶくぶくと膨れ上がります。
ギチッと音がしたかと思うと、次の瞬間、目にもとまらぬ速度でもう一体のイビルイーターに激突していました。とんでもない膂力です。
仰向けになったイビルイーターに、容赦ない連撃が加えられます。男を苦しませた「霧の怪物」は、呆気なく叩きのめされました。
しかし、残る最後の一体は、すでに魔力を溜め終えたようです。口元が妖しく光り、極太のエネルギーがその直線状を消し飛ばしました。
キメラは右の後ろ脚をやられてしまいました。これはまずいと思ったのでしょうか、大きく跳躍して距離を取り、イビルイーターを睨みつけます。
……ほう、これは驚きです。後ろ脚が再生しました!
生物としては破格のスペックですね。多少の傷なら再生可能とは。
距離を詰めるキメラに対して、イビルイーターは触手を出鱈目に振り回しますが、全てが爪で切断され、飛び上がった野獣の右腕が振り下ろされました。
地面に巨大な亀裂が入り、イビルイーターはぴくりとも動かなくなりました。キメラは動かなくなった獲物を確認し、先ほど倒した方を喰らいはじめます。
すでに戦う前とは比べ物にならない強さになっています。三体のイビルイーターをも倒す、規格外の化け物が生まれてしまいました。
キメラに呪いがじわじわと広がっていきますが、そんなものは知らぬとばかりに肉を貪ります。
……おや、呪いが消えました。呪いの耐性までつけたようですね。
(ヒッヒッヒ……かなり弱体化してるとはいえ、アレを倒すかい。楽しめそうじゃのぉ)
老人はにたりと笑うと、イビルイーターを喰らい終わった獣の前に降り立ちました。
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