過去ログ - 【ペルソナ5 佐倉双葉SS】ケスラー・シンドローム;Surrender
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名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 21:54:41.96 ID:GQKrCOd/o
※注意点
・シナリオ終了後の話なので多大にネタバレ含みます
・主人公は各種イベントで双葉を選択してきたと思ってください
・設定的によくわかんないとこは想像で書いてるので許してください
SSWiki :
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2
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:00:26.84 ID:GQKrCOd/o
隣の部屋から小さな泣き声が聞こえた。
キーボードから手を離し、椅子の背もたれを限界まで倒して背伸びをする。骨の間の気泡が抜けて乾いた音を立てた。
以下略
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名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:01:13.50 ID:GQKrCOd/o
それからしばらく待ったが、メソメソしているだけで続きの言葉は出てこない。これは言ってもいいことなのか迷ってるんだろうなぁ。
「嫌なことでもあった?」
ふるふる。艶のある滑らかな、オレンジがかった茶色の長い髪が左右に揺れた。かわいい。
以下略
4
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:02:11.17 ID:GQKrCOd/o
「うん。それはもう、かつてないほどこわかったですよ……」
妙に大人びた言い方に、ふっと頬が緩んだ。
「だよね、怖いよね。それね、たぶんお母さんのせいなんだよ」
以下略
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名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:03:12.19 ID:GQKrCOd/o
何故なら、わたしが心からそう思っているからだ。
わたしは先天的に、特殊な脳を授けられて生を受けた。
以下略
6
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:03:56.69 ID:GQKrCOd/o
それは、サヴァン症候群やアスペルガー症候群、瞬間記憶能力───通称カメラアイと呼ばれる───のようなものではなく、一定の割合で生まれる"ギフテッド"、通常の才能の延長だったようだ。
それはつまり、類稀な計算能力や記憶力と引き替えに、記憶を引き出す際に感情的になる等の副作用、有り体に言えば"障害"と呼ばれるようなマイナス面がないことを意味していた。
ただし実際にわたしがそうであったように、周囲とあまりにも違いすぎることによる軋轢と思春期特有の悩みは避けられないだろうけども。
以下略
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名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:06:11.03 ID:GQKrCOd/o
これを、天命だ、世のため人のために役立てる必要があるんだ、立派な仕事に就けるよう育ってくれ、なんて高尚なことは考えていないし、そんな世の理不尽や不条理に折られそうな綺麗事をこの子には託したくない。
ただ、この子がこの才能を憎むようなことはあってはならない。才能を呪うような事態だけは避けなければならない。だってそんなの、あまりにも悲しすぎる。寂しすぎる。
遺伝でそうなったと確たる事実はなくとも、わたしのせいであることをわたしは知っている。だからわたしのためにも、なによりこの子のためにも、この才能と向き合い、悪いものなんかじゃないと信じてほしい。受け入れてほしい。そう考えていた。
以下略
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:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:07:09.15 ID:GQKrCOd/o
「……そうなんだ」
この幼い我が子はどこまで理解しているのか、目を見開いて驚いたように言葉を発した。
「そうなの。たぶん、あと何年かしたら、こんなのいらなかった、みんなと一緒がよかったって思うこともあると思う。そんなときはお母さんの言葉を思い出して?」
以下略
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:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:08:46.84 ID:GQKrCOd/o
「なんでもないよ。…………うん。その通り。やっぱり……、よかった。大好きだよ」
「うん! わたしもおかあさんだいすき!」
言葉の通り満面の、弾けてしまいような笑顔を見て確信した。この子はわたしの一部なんだ、もう。
以下略
10
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:09:52.46 ID:GQKrCOd/o
男の人の声だ。わたしはこの声を知っている。
「えー、おなじのたべたい。まあ、たぶんどっちもおいしいからだいじょぶ!」
…………葉。…………葉!
以下略
11
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:11:46.31 ID:GQKrCOd/o
「ったく毎日毎日……。ちっとは自分で起きらんねぇのかよ。ほら、高校行くんだろ?」
そうだ。わたしは高校を卒業しなきゃなんないんだ。
約束ノート、あいつに渡しちゃってるからな。
以下略
12
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:12:36.48 ID:GQKrCOd/o
「おう、おはよう」
低血圧なわけではない。と思う。けど、去年の一年間に体得した夜型の体内時計はなかなか修正されないままだ。
ゆえに朝はキライだ。引きこもっている間は心理的に追い詰められていたので幸せなんて口が裂けても言えなかったけど、好きなだけ惰眠を貪れていたことだけは幸せだったのかもしれない。
以下略
13
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:13:58.60 ID:GQKrCOd/o
なんか変な声が出た。目も覚めた。
「何変な声出してんだ。……まあ、お前が居たけりゃずっとここに居ていいんだがな」
もうそうじろうの声は聞こえていなかった。残念。
以下略
14
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:15:08.87 ID:GQKrCOd/o
「よし、そうじろう! 今日は苦くて黒くてあっついブラックコーヒー。……に、たっぷりミルクと砂糖を入れたものを飲むぞ!」
「はいはい、カフェオレな。淹れとく」
とりあえず気休めに牛乳成分を摂っておこう。直牛乳はちょっとニガテだからコーヒーで中和するけどまあ問題はないだろ。目指せ牛。牛はちょっとアレか。
以下略
15
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:16:30.57 ID:GQKrCOd/o
わたしにできるのはそのぐらいだ。いやもっとあるか。
ならお父さんってもっかい呼んでみるとか……?
いや、それは恥ずい。それに、なんとなく安売りしたくない言葉だ。とまあ、わたしはこんなムズカシイ年頃なのである。
以下略
16
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:18:30.63 ID:GQKrCOd/o
さすがに小学生よりは精神的に成熟しているからか、わたしの特異性をあまり大っぴらにしてないからか、あの頃のような明らかな嫌がらせはないし、流暢ではないにしろクラスの子と世間話のようなことは一応できてる。と思う。できてるよな?
ただ、大半の授業がツマラナイ。世界史や地理なんかのあまり自分で調べたりしたことのない、知らないことを教えてくれる授業はまだいい。別にそんなに興味もないけど。
問題は数学に代表される理数系科目だ。一年間の独学でなんとかしてしまったことを、数十倍に薄められて長い時間に溶かされているような感覚だから授業が異様に長く感じる。あくまで独学だったので、知っていることの中に新発見がないこともないというのが救いか。
以下略
17
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:19:26.98 ID:GQKrCOd/o
今日の思考は、最近ハマった古いSFアニメについてだ。宇宙で暮らすサラリーマンとか切り口が斬新すぎる。それに、考えさせられる台詞や展開がいくつもあった。あれは名作だ……。
考えている間に目的の駅に着いた。ヨユー。嘘、ちょっと混み方がいつもより酷くて苦しい。激流に呑まれるようにして押し出される。
最近では慣れてきて、流れに逆らおうと一切しなくなったからちょっとだけ楽になった。最初の頃は電車を降りてから、駅の隅にうずくまってしばらく動けなかったものだ。
以下略
18
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:20:44.56 ID:GQKrCOd/o
抑圧された地下の駅から解放されると、陽射しにおもわず目を細めた。
てくてく歩いていると、通学路での途中で変なものばかり売っている自販機を見つけた。
これまで何度も通っていたはずなのに、今まで目に入るだけで見過ごしていたらしい。胡椒博士NEOとは、かなり惹かれる飲み物ではないか。今度買ってみよう。この自販機はたぶん前から変わってないけど、新しく発見したことでわたしの世界がまた少し広がった。
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19
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名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:21:55.05 ID:GQKrCOd/o
おしなべて世はすべてこともなし。わたしの世界は、今日もいい天気だ。ぽっかりと空いた大きな穴は埋まらないままだけどね。
進んで檻に向かう囚人のような学生の群れに混ざり、わたしはこうして秀尽学園へ向かうのだった。
以下略
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名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:22:48.95 ID:GQKrCOd/o
「えーいいじゃん別に」
なんとなく仲良くしているこの子は、わたしと違って社交的で友人も多いようだ。なのに、ナゼかわたしに積極的に話しかけてくれて仲良くしてくれる。
入学式でアワアワしているわたしに最初に話しかけてくれた子でもある。理由を聞くと、なんかほっとけなかったから、との答えが返ってきた。わたしは子供か。子供だな、うん。年上だけど。
以下略
21
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2016/11/08(火) 22:23:51.00 ID:GQKrCOd/o
記憶力や計算能力なんかが同世代の子たちとまるっきり違うのは幼い頃から理解していた。逆に、何故こんなことができないのかと昔は思っていたような気がする。
「あー、だよね。普通の子と雰囲気違うもん」
「え、マジ? わたし溶け込めてない?」
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