過去ログ - 【ペルソナ5 佐倉双葉SS】ケスラー・シンドローム;Surrender
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81:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:18:23.80 ID:R5q4UVjHo
 もう止まらない。涙も、嗚咽も。

「わたしは、まだまだ、子供だよ……。ぇぐっ、けどさ、けど、クリスマのあとだって、わたしに黙っていなくなって、どれだけ悲しくて、寂しかったと思ってんだッ! …………わたしが、ひっく、頼りにならないなんて、わかってるよ……。でも、ちゃんと言ってよ……。わたしも、隣に立ちたい……。ちゃんと、彼女になりたいんだよぉ……」

 水滴が頬を伝って流れ落ちた。目は血が出てるのかと思うぐらい熱いのに、流れ落ちたあとは冷たい。
以下略



82:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:20:36.60 ID:R5q4UVjHo
 ほんとは隣に行きたいけど、子供のワガママみたいなことを言ってしまった手前、素直に甘える気にはなれなかった。

 お互い沈黙したまま目線を交わした。わたしの鼻を啜る音に混ざって、パソコンの起動音と時計の刻む音が聞こえる。

 やがて、彼はおもむろに立ち上がり、わたしの手を掴んで椅子から立たせると、
以下略



83:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:22:21.55 ID:R5q4UVjHo
 不意を突かれた驚きという別の感情が勝り、昂りは波が引くように薄らいでいった。目から溢れていたものもおさまり始めた。

「聞いて」

 彼の真剣な眼差しにたじろぎ、体を硬直させた。膝の上で抱えられたまま。
以下略



84:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:24:31.52 ID:R5q4UVjHo
 そんな甘い言葉をおいそれと信じるわたしではない。案外意固地なんだぞ、わたしは。

「嘘じゃない。双葉がいなきゃ今もこっちに帰ってきてないし、大学をこっちにしようなんて思ってない。向こうで嫌なことがあっても、双葉の存在が支えになってる」

「…………ほんとに?」
以下略



85:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:25:12.06 ID:R5q4UVjHo
「双葉はまだ子供だって言ったけど、それは俺も同じだよ。誰かの助けがないとしんどいし、生活だってままならない。無理に変わろうとしなくたって大丈夫、双葉は成長してる」

「って言われても、自分じゃよくわかんない……」

「ちゃんと高校生やれてるじゃないか」
以下略



86:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:28:32.05 ID:R5q4UVjHo
「…………うん。じゃあ、信じる。でもわたし、もっと釣り合うような子になってみせるから……見てて」

「わかった」

 膝に横向きに座ったまま、首にしがみついた。わたしの顔は彼の肩ぐらいにある。でっかいな。いや、わたしがちっちゃいのか。
以下略



87:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:29:19.49 ID:R5q4UVjHo
 恋人みたいに抱き合ったまま、囁くような声で語り合う。恋人みたい、じゃないか。恋人でいいんだよね。

「約束ノートのこと。高校卒業したら、その、離れなくてもいい権利、行使するって言っただろ?」

「あ、そうか。卒業しなくても来年から叶っちゃうな」
以下略



88:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:31:25.78 ID:R5q4UVjHo
「なんでもこい」

「……その、あれだ。高校、卒業したら、だな……。い、一生、わたしを離さないでいてくれる、権利、ほしい」

「いいよ」
以下略



89:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:32:26.95 ID:R5q4UVjHo
 リア充死すべし、なんてもう言えないな。

 しかし、人生わかんないもんだってレベルじゃないぞこれ、わたしの場合。ジェットコースターすぎる。死ぬつもりだった去年から一年足らずで、こんな夢みたいな約束してるなんて。

「……そだ。ちょっと、目閉じて?」
以下略



90:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:33:42.23 ID:R5q4UVjHo
 …………あった。あとは、鏡……。この部屋にはちっちゃい手鏡しかなかった。まあこれでいいか。

「まだ?」

「まだー。もうちょい」
以下略



91:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/13(日) 16:35:37.62 ID:R5q4UVjHo
「…………」

「……見えてる?」

 瞬きを繰り返すだけで、なにも言わないから不安になった。
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