過去ログ - 藍子「CPのプロデューサーさん(武内P)ってかっこいいですね」未央「」
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62: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2016/11/20(日) 20:02:03.97 ID:xqRyAbuy0
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大きな城のようなビル。
シンデレラを夢見る少女たちと、それを支える魔法使いたちが時に笑い、悩み、泣き、ぶつかり、そして手を取り合い、ファンを魅了する魔法を練り上げる場所。

既に日は落ち、中庭には夜のとばりと社内からの光でコントラストが浮かび上がる。
そこで一人の女性が物思いにふけり、光の側でほっと安堵の息を吐いていた。

冬の夜は彼女の息を白く染め上げ、そして霧散する。
散ってしまった彼女の心配の種は上空へと舞い上がったのか、大都市の明かりに照らされる夜空はくもっていた。

曇り空。くすんだ色から舞い落ちるのは肌を刺すような冷たい雨か、心温める純白の雪か。

胸中で渦巻く不安と期待を反映したような空の下で彼女は待つ。
その姿は寒空の下であっても強く美しく咲き誇る花のようであった。

たとえ凍てついた風がなぎ倒さんとしてもしなやかに曲がることでいなし、その葉の上に雪が積もっても雪解けの日を辛抱強く待ち続ける。
いつか太陽が昇ることを知り、それを支えに何度も冬を耐え抜いた美しさがあった。

今日は彼女の二十五歳の誕生日。
アイドルとなって十回目の日。
そして――今日から新たに、アイドルを辞めた日が加えられた。

引退の記者会見はつつがなく終わった。
つい数刻前の大勢の記者たちによるフラッシュと好奇を隠そうともしない質問の数々を無事に終え、一段落しているところだ。

彼女は静寂な空間で、一つ一つ過去を振り返るように辺りを見渡す。
これまでの十年間を充実感と寂しさを伴いながら振り返る。

辛いこともあった。でもそれを仲間と共に乗り越えたからこそ、この充実感がある。
そしてそれをもう味わえなくなることについ涙腺が緩みそうになる。

次々と胸中を満たす想いの一つ一つが、彼女に勇気と力を与えてくれた。

引退の記者会見。
これまで応援してくれたファンに向けた、ないがしろにすることは許されない大切な儀式。
手など一切抜いていない。
最後の仕事を全力でやり終えたことで、心地よい疲労と安堵が満たされていた。

それでも――彼女にとっての本番はこれからだった。


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