過去ログ - 藍子「CPのプロデューサーさん(武内P)ってかっこいいですね」未央「」
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63: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2016/11/20(日) 20:03:00.63 ID:xqRyAbuy0
夜のとばりが占める方から、誰かが走ってくる音が響く。
姿が見えなくてもそれが誰なのか彼女にはわかる。
十年間想い続けた相手だ。
相手を待たせまいと走っている時の歩幅と踏み出す間隔は、意識して覚えようとしなくとも自然と覚えていた。


「……私を見ていてほしい。私が輝く姿、頑張る姿、くじけてしまって一人じゃ立ち上がれない姿。カッコイイところも悪いところも全部全部見てほしい。見続けてほしい」


彼が近づいてくるとおのずと思い返される。
十年前の稚拙で残酷な、何の装飾(うそいつわり)も無い願い事。


「私が苦しい時は、他の何よりも私を大事にしてほしい。恋人よりも、奥さんよりも、子どもよりも――誰とも付き合わず、誰とも一緒にならないで」


あの日の夜はあまりの恥ずかしさに寝ることはできなかった。
頭の中で身勝手な告白が幾度となく再生され、十年の時を経ても一言一句違わず呟けてしまう。


「私を――――プロデューサーの一番にしてください」


若く無謀でなければ言えないような体当たりの告白。
彼女の頬が自嘲で歪むが、その胸中は甘酸っぱさと満足感で満たされていた。

もしあの時、親友の助言に従っていなければどれだけの後悔があったか。
彼女のおかげで、ついにここまでこれた。

響き渡る駆け足の間隔がゆっくりとなり、やや肩を上下させた大男が姿を現す。
まだ壮年の歳だが、散見される白髪は彼がどれだけの激務をこなしているかを容易に想像させる。


「お待たせしてしまい、申し訳ありません」

「ううん、こっちこそ呼び出しちゃってごめんなさい」

「……本田さん、改めて十年間お疲れ様でした」


男はその体を深々と曲げる。
親しき仲にも礼儀あり。それはついに十年経っても変わらなかった。
いや、死ぬまで変わらないだろう。

そして別に変わる必要は無い。
彼女をはじめ、彼の周りにいる人たちはそんな彼の人柄を好んでいるのだから。


「ありがとう……私が十年間頑張れたのは、プロデューサーのおかげだよ」


そんなことはない、と否定しようとする男を彼女は手で遮った。


「私がここまでやれたのはプロデューサーのおかげ。私の我がままで……プロデューサーの人生を縛ったせいだよ」

「私のせいでプロデューサーを十年も寂しい想いをさせちゃった」

「だから、ありがとう。そして、ごめんなさい」


今度は彼女の方が深々と頭を下げた。
たとえ願いを聞き入れるという判断をしたのが、自分より経験豊富な男の方だとしても、このことは謝るべきだとずっと考えていた。


「……自分でも図々しいと思うけど、最後に一つだけ、プロデューサーにお願いがあるの」


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