過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝Re】２ -SS速報VIP

過去ログ - 真・恋姫無双【凡将伝Re】２

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889:一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo.[saga]
2018/01/30(火) 23:18:12.08 ID:0PKznNva0
楽曲が南皮の街に響き渡る。
聞きなれないその調べはしかし、悠然と歩みを進める彼らに似つかわしい。

先頭を歩く男は、怨将軍たる紀霊。
三尖刀――かつての匈奴戦役において匈奴の汗（ハーン）を討ち取った伝説級の、紀家の宝刀である――を背に、歩を進める。
白を基調とした紀家軍は一糸乱れずに彼に付き従う。その歩みはまさに。

「威風堂々」

石畳の上の真紅の天鵞絨（ビロード）。そこを歩む彼らに歓声が沸き立つ。
その声に一顧だにせずにその歩みを進める紀家軍。

不意に紀家軍がその歩みを止める。
それを合図としたか、楽曲が止み、静寂が広がっていく。

その場で歩を進めるは紀家軍先頭の怨将軍のみ。
向かう先には金色を背負う袁家当主が。

右に文醜、左に沮授。袁家文武の要を従えて悠然と彼を待つ。

しわぶき一つなく、場は清澄に静まり返る。

自らの主の前に至った紀霊は優雅に跪く。
そして三尖刀を抜き放つ。

「紀霊、只今帰参いたしました」

しん、とした場に男の声は続けて響く。
三尖刀を引き抜き、切っ先を自らの胸に向けて柄を主君に預ける。

「君はわが剣唯一の主君なり。
　君、わが剣の主となることに異存なくんば、いざわが剣を受けたまえ。
　わが忠誠を試さん時はその御手にて、いつなりとも我が胸を突きたまえ。
　わが生命は君に奉りし物にして、君がため死するはわが心の喜びなれば。
　君、わが剣の主たるを肯じたまわば、いざわが剣を受けたまえ。
　またもし我が忠誠、君の御心に叶わずは、
　ただいまこの剣の柄を押し、わが生命をとりたまえ」

されていた。

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