49: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/08(木) 21:53:28.04 ID:LNih3IB00
眠ってしまっているのかもしれない。
そんな不安を振り払い、言葉を続ける。
まだ夕方だぞ。起きているに決まっている。きっと、聞いてくれているはずだ。
「だから、お前が心配するようなことは何もない。再開するのはすぐじゃなくて良い。気持ちが落ち着いてからで良い。ただ、話だけでも、返事だけでもしてくれないだろうか」
そこで一分ほど待ってみた。が、やはり沈黙は保たれたまま。
まぁ、俺が言葉を投げかけるだけで出てこられるなら、とっくに解決していた話だ。
「出てくるまで、ここで待つよ」
持久戦だ。
俺は幸子の部屋の前に腰をおろし、あぐらをかいた。
「食事やトイレ、風呂に入る時はドアをノックしてくれ。顔を合わせたくないのなら、その間だけ、ノックの音で俺は扉の前を離れる」
生理的欲求の隙を突くような、卑怯な真似はしない。
そしたら、幸子の心はきっと俺から離れていく。
背中をドアへ預ける。
これでノックがあればすぐに気付けるだろう。
物音一つない部屋の中を想い、俺は静かに闘いを始めた。
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