52: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/08(木) 22:01:43.56 ID:LNih3IB00
廊下の突き当たりには小窓がある。
そこから差す朝の日差しが、鋭く俺の目を襲った。
眠れば俺は世界から縁を切られてしまう。
裏を返せば、眠らなければ良い。
一晩しか経っていない今、まだまだ余裕は残っている。
幸子が目覚めたらしく、ドアの向こうからひたひたと足音が聞こえる。
控えめにノックの音が聞こえたので、俺は「どくぞ」と声をかけて立ち上がった。
隣室で開閉音を耳にして、およそ30分後に二度目の開閉音。俺は部屋の前へ戻る。
しばらくして、幸子の母親がやってきた。
「夜通しそこにいたんですか」と訊かれたので「用を足す以外は」と答えると、食事をいただけた。旨かった。
食事を終えると正午を迎えていた。時間だけは腕時計で確認している。
突然にスマホが騒々しく音を立て始め、見れば上司からの着信である。俺が事務所へ出社しないためだろう。
事務所へは、仕事のために行くものだ。今の俺にとっては、これが仕事。であれば、事務所へ向かう意味はない。
俺はスマホの電源を切った。
やがて夜になった。
再び幸子の母親が現れ、二人分の食事を持ってきた。俺と幸子の分だ。
俺は隣室でそれを食い、その間にドアの開閉があった。
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