4: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:43:08.47 ID:81cm0N8d0
「それで、橘さんはなにしに来たの? 今日はなにもないよね」
気になっていた疑問を投げかける。すると橘さんはわかりきっていたと言わんばかりの勝ち誇った顔をする。昔と比べて表情豊かになったものだと、机の上の写真を見ておかしくなった。
「用がないと会いに来てはダメですか?」
「つまりぼくは暇つぶし相手なのか」
「そ、そうじゃなくて! むぅ」
むっと頬が膨らんだ。その仕草は可愛らしくて、ありすちゃんと呼ぶほうが似合いそうだった。橘さんは恨めしそうに睨みながら言う。
「……自主レッスンのメニューをトレーナーさんに相談しに来たんです」
「なるほどね。ついでに挨拶に来てくれたわけだ。ありがとう」
「ついでじゃないのに……」なんて不満そうに呟いて橘さんはため息を吐いた。
まあ最近は卒業式のためにスケジュールを空けているから会えていなかったし、様子を見にきてくれたのだろう。
「時間あるなら、写真選ぶの手伝ってよ。帰りは送るからさ」
そう言うと表情はぱぁっと明るくなった。こうして一緒にいてくれるうちが華だよなぁ、なんて父親みたいなことを考えてみる。結婚すらしていないのに父親気分を味わって、ぼくはますます結婚できなさそうだ。
ウエディングドレスを着た、ありすちゃんだった頃の写真を手に取る。「待てますか」なんて言ってくれたのを思い出して、なおさら父と娘みたいだと笑った。
共同作業のおかげもあってか、それから一時間ほどで写真選びは終わった。
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